数年ほど前からでしょうか、「〇〇リテラシー」という言葉をよく聞くようになりましたね。
「リテラシー」という言葉は語源的には読み書きする能力とか、読解力という意味があるようです。
最近は国の政策を受けて「金融リテラシー」という言葉もよく聞かれるようになり、この場合は上の語源的な意味とは少し違った用いられ方をします。
この回では金融リテラシーとはどのようなものか、私たち個々人が身に着けるべき金融の知識と共に見ていきます。

■金融リテラシーとは?

金融リテラシーとは?

「リテラシー」のそもそもの語源は上で見たように元々は読み書きの能力を意味するものですが、近年使われる「〇〇リテラシー」は特定の分野における知識やスキル、理解力などを指すのが一般的です。
例えば「ITリテラシー」という言葉もあり、これはITに関する知識やスキル、理解力を指すことになります。
「金融リテラシー」という場合、お金に関する知識やスキル、理解力ということになりますが、こちらの場合はもう少し踏み込んで、経済的に自立し、望ましい生活を送るための知識や能力までを意味します。
言い方を変えると資産防衛能力、生活防衛力ということもできるかもしれません。
生活する上ではお金に関する知識は不可欠であり、正しい知識を持っていれば怪しい儲け話に騙されたり、これによって資産を失ってしまうことを避けられます。
この意味では、金融リテラシーは護身術の一種であると言っても過言ではないかもしれません。
金融リテラシーは現代に生きる全ての人が身に付けるべきものと言えますね。

■日本人は金融リテラシーが低い?

日本人は金融リテラシーが低い?

そもそも、日本人は金融リテラシーが低いということが言われていました。
これは、「お金」というものに対する日本人の古い意識が邪魔をしてしまい、お金の勉強をする=お金儲けを考える=悪というイメージを持ってしまうことが原因とされています。
最近はこのイメージもだいぶ薄まりましたが、これは国を挙げて国民の金融リテラシー向上に努めた成果と言えます。
お金に関する知識を付けるということは何もお金儲けをするためのものではなく、上でも見たように大切な資産を守るための知識を付けるということです。
老後資産の構築など投資によって資産を適切に増やすことも金融リテラシーの範疇に入りますが、これを超えた投機的な意味合いは金融リテラシーには含まれません。
近年、我が国では成人年齢が引き下げられ、金融リテラシーの低い若年層が様々なトラブルに巻き込まれる事案が多発しています。
こうした現状を考えると、国民の金融リテラシー向上は急務であると言えます。

■最低限身に着けるべき金融リテラシーとは?

最低限身に着けるべき金融リテラシーとは?

では最低限身に着けるべき金融リテラシーとはどのようなものなのでしょうか。
金融庁では、以下の4分野15項目に分けて身に付けるべき金融リテラシーを提示しています。

第一分野: 家計管理

①適切な収支管理を習慣にすること。
これは家計管理において収支管理を適切に行うということで、赤字があればこれを解消し、黒字家計に修正するための知識や能力を身に付けましょうということです。

第二分野: 生活設計

②ライフプランを明確にすること。
将来の人生設計を考えるということで、自分が概ね100歳まで生きると仮定して、その最中に起きる就職や結婚、マイホーム購入などのライフイベントを想定し、費用面でこれに備えましょうということです。

第三分野:金融と経済の基礎知識、金融商品を選ぶスキル

まずは金融取引の基本の素養として以下の③~⑤が挙げられています。

③契約内容をよく読んで理解する、相手方や日付・金額・支払い条件などが明記されているか確認するなど基本的姿勢を習慣にすること。

④情報の発信元や契約相手となる業者の信頼性を必ず確認すること。

⑤ネット取引の利点と注意点を正しく理解すること。

次に、金融分野共通事項として以下⑥~⑦が挙げられます。

⑥単利・複利などの金利について、またインフレ、デフレ、為替、リスクとリターンなど金融・経済の基礎知識を身に着けること。そして金融商品の適切な利用選択について理解すること。

⑦手数料など金融取引にかかるコストを正しく把握すること

保険商品分野として以下⑧~⑨が挙げられます。

⑧死亡や病気など、保険でカバーするべき事態とは何かを考えること。

⑨カバーすべき事態が起きたとき、必要となる金額を考えること。

ローン・クレジット方面では以下⑩~⑪が挙げられます。

⑩住宅ローンを組む際の留意点を理解すること。

⑪カードローン・クレジットカードなどを計画的に利用する習慣を身に着けること。

資産形成商品の方面では以下⑫~⑭が挙げられます。

⑫高リターン商品は高リスクが伴うこと理解すること。

⑬資産形成における分散投資の効果を理解すること。

⑭資産形成における長期運用の効果を理解すること。

第四分野: 外部の知見の適切な活用

⑮金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に活用する必要性を理解すること。
これは、金融商品に手を出す際には専門家のアドバイスを上手に活用しましょうということです。
以上、金融庁が挙げる15項目を見てきましたが、これらを実際の生活の中でどのように捉えるべきなのか、より具体的に考えてみましょう。

■実際の生活の中で考える金融リテラシー

実際の生活の中で考える金融リテラシー

①お金を使うという側面から

お金を「使う」という側面からはライフプランを考える能力が必要になってきます。
ライフプランは言い換えるとどのような人生を送りたいか人生設計を考えるということです。
必要なお金は人生設計によってかなり変わってきます。
といっても初心者の方は何をどう考えれば良いのか分かりにくいかもしれません。
金融庁のWEBサイトでライフプランシミュレーターというものがあるので、考えるきっかけとして一度試してみると良いでしょう。
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/lifeplan-simulator/

②危機に備えるという側面から

人生では病気やケガ、火災や地震、事故など様々なリスクに直面します。
日本は公的な社会保障システムがあり、これを補填する役割のある民間保険もあります。
公的な社会保障に何があり、どういったリスクに対応するのか、生命保険や損害保険でどのようなリスクをカバーできるのか、自身のライフプラン上で各種の保険がどう機能するのか考え、備えの重要性を確認しましょう。

③お金を借りるという側面から

借金は必ずしも悪いものではなく、適切に利用することで危機を乗り越える手段となります。
適切に利用するには利子や手数料などの仕組み、また返済リスクの理解なども必要です。
ローンやリボ払いといった仕組みも理解しておかないと、借金が人生に悪い影響を及ぼしてしまう危険があります。
成人年齢が引き下げられた経緯もありますので、特に若年層の方は借金をすることの基本的な意味などから丁寧な理解が求められます。

④貯める・増やすという側面から

資産形成の手段としては大きく貯蓄と投資があり、まずは家計管理を行うことで安定した貯蓄を行うのが先決です。
その上で、余剰資金ができたならばそれを投資に回し、将来の生活費を自分で確保するという姿勢も必要になってきます。
貯蓄については大きなリスクはありませんが、投資にはリスクがつきものですので、簡単に手を出すのは危険です。
焦る必要はないので、投資とはそもそもどういうものなのか、時間をかけてじっくりと学んでいく姿勢で取り組んでいきましょう。

■まとめ

本章では金融リテラシーとはどのようなものか、私たちが身に着けるべき金融知識とはどのようなものなのかについて見てきました。
金融リテラシーは金融やお金に関する知識やスキル、理解力を指し、経済的自立を助けてくれるものです。
必ずしも投資などで儲けを出すための知識ではなく、自分の資産や生活を守るための知恵という捉え方で良いと思います。
お金に関して知恵を付けることは元来疎まれる文化がありましたが、金融リテラシーはそのような意味合いのものではないということで最近は理解が進んでいます。
自分自身や家族の資産と生活を守るため、金融リテラシーについて積極的に学ぶ姿勢を持ちたいですね。