ファクタリングは事業資金調達手段の一つで、掛け取引で生じた売掛債権を売却して現金化するものです。
借り入れとは異なり返済の必要がないことから安定した事業資金として活用でき、利用に担保や保証人が不要など様々なメリットがあります。
契約形態としては二社間ファクタリングと三社間ファクタリングの二つの方式があり、実際に利用する際にはどちらの方式で進めるか選択することになります。
本章では二社間ファクタリングと三社間ファクタリングの違いについて詳しく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

■二社間ファクタリングのロジック

二社間ファクタリングのロジック

大きな違いとしてまず取引全体のロジックを押さえる必要があります。
二社間ファクタリングで取引当事者となるのは債権を譲渡する会社とファクタリング業者で、売掛先の会社は取引当事者となりません。
取引の進行過程を示すと以下のようになります。

1、債権譲渡会社とファクタリング業者で譲渡契約を締結
2、売掛先から債権譲渡会社に通常通りに売掛金が支払われる
3、入金された資金を債権譲渡会社がファクタリング業者に移送する

二社間ファクタリングでは期日になると売掛金が通常通り支払われます。
売掛金の権利は1の契約によってすでにファクタリング業者に移っているので、債権を譲渡した会社は意図せずともその資金を使い込んでしまわないように注意が必要です。
受け取った資金はファクタリング業者が指定する口座に振り込むなどして精算し、取引が完了します。

■三社間ファクタリングのロジック

三社間ファクタリングのロジック

三社間ファクタリングは売掛先の合意を取って進める方法で、売掛先にも取引当事者になってもらいます。
取引の進行過程としては以下のようになります。

1、ファクタリング利用について事前に売掛先の合意を取る
2、債権譲渡会社、売掛先、ファクタリング業者の三者で契約を締結
3、売掛金の支払日が到来したら、売掛先からファクタリング業者に支払いがなされる

三社間ファクタリングの場合、売掛金の支払いは債権譲渡会社を経由せず、ファクタリング業者に直接なされます。
そのため債権譲渡会社としては、意図しない資金の使い込みのリスクを避けられ、また資金移送の手間も省けます。
二社間、三社間ファクタリングには以上のようなロジックの違いがあるのですが、両者にはメリット・デメリット面でも色々と違いが出てきます。
次の項ではそれらをまとめて見てみましょう。

■メリット・デメリット面の違い

メリット・デメリット面の違い

①信用面の影響

二社間ファクタリングは売掛先に債権譲渡の事実を知らせずに進められるので、信用面で影響が出る心配が要りません。
業界や個別企業間の関係にもよりますが、債権譲渡の事実を知られると信用が落ちてしまう可能性もあります。
最近はファクタリングによる資金調達が一般化しているので影響がないケースも増えていますが、今後の取引関係に影響が出るのを避けたいという場合は二社間取引が有利です。

②現金確保までのスピード

三社間取引は事前に売掛先の合意を取る過程が入るので、説明や納得を得るのにある程度時間がかかります。
それでも通常は数日程度のロスで済みますが、「明日までに資金が必要」という緊急のケースでは間に合わないこともあります。
二社間ファクタリングは売掛先の合意は必要ないので、債権譲渡会社とファクタリング業者間で条件が合致すればすぐに買取金が支払われます。
即日の資金化も可能ですから、緊急事態にも対応できます。

③手数料について

金銭的な負担の面では手数料に違いが出ます。
二社間ファクタリングは売掛先の合意を取らずに進めることから、ファクタリング業者にとっては資金回収のリスクが高まります。
そのため手数料面では三社間ファクタリングよりも高くなるのが普通です。
個別のケースにもよりますが、二社間ファクタリングでは概ね譲渡する債権価格の10%~30%程度となることが多いです。
三社間ファクタリングの場合、売掛先の合意が取れているのでファクタリング業者のリスクはほぼなくなります。
そのため手数料面ではかなり優遇され、債権価格の2%~9%程度に抑えられます。

④債権譲渡登記の要否

債権譲渡登記は債権の二重譲渡のリスクなどを避けるためになされるもので、登記上に債権譲渡の事実を反映させるものです。
二社間ファクタリングでは売掛先の合意が入らないことから、ファクタリング業者のリスク回避のために債権譲渡登記をすることが取引条件となることがあります。
登記には一定の費用がかかり、これは債権譲渡会社の負担となります。
また登記は誰でも閲覧できるので、売掛先が確認すれば債権譲渡の事実を知られることになります。
ただ、何もないのに登記簿を確認されることはないので、ファクタリングの事実を知られる可能性はほぼないと考えて差し支えありません。
三社間ファクタリングは売掛先の合意があり債権の二重譲渡の危険はないので、債権譲渡登記は不要です。

■ケース別の使い分け

ケース別の使い分け

では二社間、三社間ファクタリングをどのように使い分ければ良いのか見ていきます。

①二社間ファクタリングがお勧めできるケース

売掛先や業界の関係者に債権譲渡の事実を知られると信用面で影響が出る心配がある場合は二社間取引の方が安全です。
売掛先は業界の他社ともつながりがあるでしょうから、「〇〇社は売掛金の譲渡した」という事実が他に伝われば、業界内での信用が落ちてその売掛先以外の会社からも取引を敬遠されてしまうリスクが出てきます。
ですから秘密裏にことを進めたいなら二社間ファクタリングが安全です。
また数日以内に支払いが必要で資金ショートの危険が生じたケースでも、最短で確実に資金を手にできる二社間ファクタリングがお勧めです。

②三社間ファクタリングがお勧めできるケース

資金調達のために売掛債権を譲渡することについて、売掛先の理解や協力を十分得られるようであれば、信用面に影響がないと考えて三社間ファクタリングが勧められます。
また多少信用面で影響が出たとしても、費用をできるだけ抑えたいならばこちらを優先します。
手数料や債権譲渡登記の費用を浮かせられるので、実利面では三社間ファクタリングがかなり有利です。
後は資金確保までの時間的余裕なども見て、二社間、三社間どちらにするか考えると良いでしょう。

■取引形態を選べない業者は要注意

取引形態を選べない業者は要注意

ファクタリングには二社間、三社間ファクタリングの二種類があることを見てきましたが、ファクタリング業者によってはどちらか一方の形態でしか取引できない、あるいはどちらか一方の形態だけを強く勧めてくる業者もいるようです。
二社間取引を強要する業者の場合、手数料の利益狙いであることもありますし、三社間取引を強要する場合は、資金回収のリスクを極力避けたいという狙いがあるのでしょう。
ファクタリング業者にそうした狙いがあるとしても、これを強要されると利用者側の自由が阻害されますし、必ずしも利用者にとって有利になるとは限りません。
大切なのは利用者にとってどちらが都合が良いかということで、利用者の都合を優先すべきであると当社は考えます。
利用企業が置かれている状況を踏まえ、どちらが望ましいのか専門家の目線でアドバイスをしたうえで、利用者が取引形態を選ぶというのがあるべき姿だと考えます。
ですから当社では二社間、三社間どちらの形態も利用者側で自由に選択できます。
事情をお伺いしたうえで、どちらが望ましいのかアドバイスをさせて頂きますので、お気軽にご相談頂ければと思います。

■まとめ

本章では二社間ファクタリングと三社間ファクタリングの違いについて見てきました。
両者は取り引きの進め方などロジックが異なり、秘密性や迅速性、手数料などの面で違いが出てきます。
ファクタリングを利用する際には、これらの違いを理解したうえで検討するようにしましょう。
弊社ではどちらの形態も自由にお選びいただけますので、安心してご相談くださいませ。