弊社ではファクタリングによる事業資金提供はもとより、経営の諸問題に対して各種相談ごとに応じるコンサルティング業務も行っています。
その中で、「ファクタリングを利用すると融資や借り入れに影響するのか?」という質問、疑問が利用者の方から多く聞かれます。
最近はファクタリングをメインの資金調達手段として利用する所が増えていますが、融資と併用している所も多くあるので、この回ではファクタリングが融資にもたらす影響や双方のメリット・デメリットについて解説していきます。
■ファクタリングは融資に影響する?
結論から言うと、ファクタリングを利用しても融資に影響することはありません。
現在すでに融資を受けていても問題ありませんし、ファクタリングを利用したからといって将来の融資が否決されるようなこともありません。
そもそもファクタリングは外部に知られずに利用できるものですし、三社間取引を実施して売掛先には知られたとしても、金融機関がそれを個別に察知するということはありません。
借り入れを実施した場合、その情報は信用情報機関に登録されるので、融資元の銀行以外の金融機関もその情報を参照できますから、もし返済を焦げ付かせれば信用はがた落ちで以後の取引は難しくなります。
しかしファクタリングは貸金取引ではないので信用情報機関に登録されるということはありません。
ですから金融機関がファクタリングの利用を知る機会自体がないわけです。
仮に知られたとしても債権を売却して現金化しただけですから、これを理由として融資を否決されることは通常考えられません。
ただ、銀行は貸した金を返せるのかどうか対象企業の経営状態や体力を調査しますから、財務諸表などから経営が行き詰まっていると判断されれば融資は難しいでしょう。
これは元々の経営が上手くいっていないからであり、ファクタリングを利用したこととは関係ありません。
むしろ、経営が行き詰る前に平常時からファクタリングを利用してキャッシュフローを安定化させることで銀行からの好印象を引き出すことにつながるので、この点は下の項で解説します。
■ノンバンクの利用は信用低下につながる
借り入れのみを資金調達法としている企業の場合、メインバンクに融資を否決されると頼れるのは金利の高いノンバンクしかありません。
ノンバンクの融資も銀行と同様に貸金取引ですので、利用状況は信用情報機関に登録されます。
経営者として知っておきたいのは、ノンバンクを利用することは信用の低下につながるということです。
ノンバンクを利用するということは、銀行に融資を断れたことを意味します。
すなわちノンバンクを利用した=経営が厳しいということが知られてしまうわけです。
他の金融機関は信用情報機関を参照できるので情報を知られますし、取引先の開拓などの際にも信用情報機関の登録内容を開示するように言われることがあり、これによってノンバンクの利用を知られるとマイナスに影響します。
■銀行融資が望めない状況でファクタリングを検討すべき
銀行融資が望めない場合、信用低下につながるノンバンクではなく、ファクタリングを検討すべきです。
ファクタリングは上で見たように信用が低下することはなく、さらに以下のようなメリットがあります。
①返済不要で事業計画に影響しない
返済が必要になる融資の場合、利息を乗せて返済が必要になりますから、これを見据えた返済計画を立てることが必須になります。
これは事業計画にも影響するので、本業の足かせとなることもあります。
ファクタリングは債権の譲渡取引であり返済義務は発生しませんから、返済に怯える必要もありません。
②赤字でも税金滞納があっても利用できる
融資は赤字があると利用の可能性がかなり低くなりますし、税金の滞納があるとまず間違いなく融資は否決されます。
これは銀行側の返済リスクを考えれば当然のことです。
これがファクタリングの場合、返済という概念自体がありませんから、その売掛債権に価値があれば赤字であろうと税金の滞納があろうと問題なく利用できます。
③保証人や担保が無くてもOK
同じ意味で、返済が必要ないファクタリングでは保証人や担保の提供も一切不要です。
債権自体に価値を見出すのがファクタリングですから、別途保証人や担保の用意を求められることはありません。
④即日の資金確保が可能
融資は対象企業の経営状況や信用調査にかなり時間がかかります。
担保や保証人の保証力、信用力の調査にも時間がかかるので、急ぎの事案では間に合わないことが多いです。
ファクタリングは融資のような時間のかかる審査はなく、最短即日で資金調達が叶います。
このようにメリットが多いのがファクタリングであり、利用しても融資に影響がでることはないのですから、ぜひ積極的に検討して頂きたいと思います。
■むしろ将来の融資相談の際に有利に働く
ファクタリングは融資に悪く影響するどころか、有利に影響することがあるのでこの点も押さえておきましょう。
ファクタリングは売掛債権という勘定科目が現金に変わるため、オフバランス化により財務諸表上の見た目が良くなります。
売掛債権自体は別に悪いものではなくどの企業でもあるのですが、これが多すぎると見た目が良くありません。
不良債権化する可能性のある売掛債権が現金という安全な資産に変わることで、財務諸表がスリム化して見栄えが良くなります。
また売掛債権が少なく財産バランスが良いと、健全経営が保たれているように見えますから、この意味でも銀行の印象が良くなります。
■ファクタリングにはデメリットも
一方でファクタリングには一定のデメリットもあるので押さえておきましょう。
①現金化ロスが生じる
ファクタリングの利用には一定の手数料がかかるので、現金化ロスが生じることになります。
手数料の目安は二社間取引の場合で債権価額の10%~30%程度、三社間取引で2%~9%程度です。
②計画的に利用しないと経営体力を削られる
良くも悪くも、ファクタリングは借り入れよりも手軽で迅速な資金調達ができるため、気軽に利用し過ぎると現金化ロスが重なって財務体力が落ちてしまう可能性もあります。
計画的に利用を検討してください。
③調達金額に限度がある
ファクタリングは売掛債権の価額以上の資金調達は望めません。
必要な資金額に対して売掛債権の価額が小さい場合、必要な資金を確保できません。
この場合は借り入れと併用して目標金額の調達を考えます。
④債権譲渡登記が必要になることも
二社間取引で進める場合、債権の二重譲渡などのリスクを考慮して債権譲渡登記が必要になることがあります。
債権譲渡登記をする場合の費用は利用者が負担します。
⑤一括精算が必要
二社間取引で進める場合、売掛金は支払期日になると通常通りに支払われます。
債権を譲渡した企業はすでにその権利を手ばなしていますから、その資金をファクタリング業者に移送しなければなりません。
その際、口座に振り込まれた資金を意図せずとも使い込んでしまう可能性があることに注意が必要です。
■融資を利用すべきケースやメリット
融資にもメリットはあり、適用するケースもあるので見ていきます。
①調達金額に上限が無い
借り入れの場合は信用さえあれば調達金額に上限がありません。
必要な金額を調達できれば事業への支障は出ないでしょう。
②信用実績を作れる
融資を利用して契約通りに返済すれば利用実績が評価されて銀行からの印象が良くなります。
繰り返して利用実績を作ることにより、金利を優遇してもらえたり、他の相談に乗ってもらいやすくなるなどの期待も持てます。
③公的融資なら低金利
日本政策金融公庫など公的な融資を利用する場合、2%~3%程度の低利率で借り入れが可能です。
ただし公的な融資は税金が入っているため使い勝手が悪く、また政府施策の目的に沿った事業者、事業内容でなければそもそも利用できません。
また審査にも長期間かかるため急ぎのケースでは全く役に立ちません。
■融資を利用するデメリット
逆に融資のデメリットをまとめると以下のようになります。
①時間かかる
政府系金融機関だけでなく、銀行など民間の金融機関も融資実施までには結構な時間を取ります。
「3日後までに」「明日までに」といった急ぎの事案では対応が難しいことが多いです。
②そもそも借りられないこともある
ファクタリングは売却可能な売掛債権があれば利用できますが、融資の場合は信用面のチェックで引っかかると1円も借りられません。
③担保や保証人必要
融資ではほぼ必ず担保や保証人を求められます。
担保や保証人が用意できない、すでに担保枠が上限に達しているという場合も融資は望めません。
④信用情報機関に情報が載る
上でも少しお話ししましたが、融資を利用するとその情報は信用情報機関に登録されるので、もし焦げ付きを起こせばその情報は他の全ての金融機関に知られることになり、以後の事業継続が難しくなります。
⑤返済義務が生じる
当然ながら利息をプラスした返済義務が生じるため、事業計画に悪い影響が出る可能性があります。
■まとめ
本章ではファクタリングの融資に対する影響や、融資とファクタリング双方のメリット、デメリットについて見てきました。
ファクタリング利用によって融資に悪い影響がでるということはなく、むしろ銀行目線で高評価を受ける要素があるので、ぜひ安心してご利用頂ければと思います。
ファクタリングの性質上、債権価額以上の資金調達が望めないなどのデメリットもあるので、融資を併用したり上手く使い分けをするなどして状況に見合った資金確保ができるように考えてみましょう。