経済界では円安脱却を目指す動きも見られるものの、現状では円安の状況が続いています。
円安はモノを海外から仕入れる輸入企業にとって苦しい状況で、資金繰りにも大きく影響します。
この回では大阪商工会議所が公表した記者発表資料「資金繰り状況と円安が経営に与える影響に関する調査」を基にして円安による影響を捉えつつ、資金繰りについて考えてみましょう。

現在の売り上げ状況は?

現在の売り上げ状況は?

この資料は大阪に関する資料ですので全国の事情とは異なる部分もあると思いますが、円安の状況を鑑みた調査ということで役に立つ情報源です。
調査は2023年の11月に行われ、大阪商工会議所所属の中堅、中小企業283社が回答に参加しています。
この調査によれば、2019年度と比較した売り上げ・経常利益がコロナ前に戻っていないと回答した企業が4割を超える結果となっています。
円安以外にも売り上げに影響する要素は多々あり、現状では以前のレベルには戻っていないようです。

円安の影響は?

円安の影響は?

円安の影響に関する聞き取りも実施され、現在の為替水準について53.8%の企業が経営にマイナスに作用していると回答しています。
特に製造業では7割が経営にマイナスと答えていて、燃料価格の高騰の影響を受けやすい業界があおりを受けている状況が見えます。
円安の具体的な影響を問う項目では、「原材料、商品、エネルギー価格上昇に伴うコスト上昇」が68.9%と高くなっています。
マイナスの影響があると答えた企業からさらに具体的な回答を抽出すると、以下のような声が聞こえます。
・海外のクラウドサービスの利用料負担が増している
・販売価格を上げたものの、それ以上のコスト増が襲っている。更なる値上げは顧客離反につながる
・部品代や電気代が上がっているが、取引先との値上げ交渉が進んでいない
ちなみに、この調査では75.6%の企業が日本円120円台が望ましいのではないかと回答しています。

資金繰り状況は?

資金繰り状況は?

本調査では資金繰りに関しての質問もなされていて、まず新型コロナ関連融資の借り入れ状況については46.3%の企業がコロナ関連融資を利用しており、8割程度の企業が返済を開始しています。
融資を利用した企業のうち75.7%が当初の条件通りの返済を予定しています。
また資金繰りの状況については、8割以上の企業は資金繰りの問題は無しとの回答が出ています。
ただし、今後資金の確保が必要と答えた企業のうち6割程度は、3ヶ月以内に充分な資金繰りのめどが付く見込みがないとの回答も出ています。
借り入れの目途が付かない企業の対応方法を問う項目では、「経費削減・事業縮小・新規投資の中止等支出の削減」が最も多く6割超となっています。
融資を受けた企業の資金の用途としては「運転資金」が74.0%で最も多く、次いで「既存設備の維持・補修、入替」が22.1%、となっています。
付き合いのある金融機関の貸し出しにかかる態度を問う質問では、7割程度の金融機関は態度に変化なし、厳しくなったとされたのは2割弱となっています。

円安の影響を総評すると?

円安の影響を総評すると?

今回見てきたのは大阪に限定されるものですが、国内ビジネスの主要都市ですから、ある程度国全体を見渡せる指標として考えて良いと思います。
総評としては、円安の影響として現状では国家レベルの危機とは言えないまでも、中小では苦しい所も出ていて、特に製造業では厳しさがにじみ出ていると評価できます。
物価高は今後も続く見通しですので、中小企業についてはボディブローのようにダメージが蓄積することが懸念されます。

多層的な資金調達法を考えよう

多層的な資金調達法を考えよう

大阪に関しては借り入れや資金繰りの危機状況はさほどでもない印象を受けましたが、個別の企業では楽観視できるところは多くないのではとの実感を持っています。
資金繰りの問題は借り入れに頼るところが多いと思いますが、銀行は利益が出ている時は良い顔をするも、経営が苦しくなった途端に手のひらを返します。
融資だけに頼る姿勢は危険ですので、資金調達方法は借り入れ以外の多層的な手段を用意しておくことが大切です。

まとめ

この回では円安による影響を捉えつつ、企業の資金繰りの状況などについて見てきました。
円安の影響はやはり全体的に出ており、製造業を中心に中小の事業者の利益を圧迫しています。
今回取り上げた調査では融資を受けた企業の使い道として「運転資金」が多かったことから、日常求められる事業資金の需要が多いことが伺えます。
こうした資金は突然需要が起き、資金ショートの要因になる事があるので注意が必要です。
緊急の資金需要にはファクタリングが有効ですので、資金調達手段の一つとしてぜひ活用頂ければと思います。