世の中の変化のスピードは年を経るごとに速まっているように思います。
経済や社会情勢もめまぐるしく変わる中で、金融業界でも様々な変化が見られます。
私どもが運営するファクタリングサービスも金融業界全体で見れば比較的新しいと言えますが、すでに市場では借り入れに代わる資金調達手段としてしっかりと定着していますね。
今回は金融業界全体とファクタリング業界双方の未来について語ってみたいと思います。
企業価値担保権を基にした融資が増加する?
企業価値担保権は昨年2024年に作られた新しい担保権で、無形の企業資産を活用した資金調達を推進するために法制化されたものです。
従来、企業が資金調達を行う際には不動産資産などの有形資産を担保に差し出すのが一般的でした。
まとまった担保価値が認められるのは通常不動産のみで、自動車や工場機械などの動産は担保価値を認めてもらえないか、認めてもらえたとしても僅かな金額算定にしかならないのが普通です。
国内の企業の多くはこの点で資金確保に苦労することが多く、日本の産業力強化の足かせになっているという指摘が多くなされていました。
国は不動産資産に頼らない資金調達を推奨していたところでしたが、その具現化の方法として事業性融資推進法を制定し、2024年の6月に施行する運びとなりました。
この法律により企業価値担保権の概念が生まれ、無形資産を含む事業全体を担保の対象とすることが可能になっています。
例えば企業が保有する顧客基盤や取引のデータ、独自技術やノウハウなども無形資産として担保の対象として見てもらえるので、不動産資産を持たない企業でも資金提供を受けやすくなるというのがこの施策の狙いです。
企業価値担保権を実際に活用するには少し面倒で、通常の融資のように銀行に担保を差し出すのとはロジックが異なります。
借り手となる債務者は無形資産も含めて担保を提供しますが、この担保は貸し手となる債権者ではなく信託会社を介して提供することになります。
担保権の対象となるのは無形資産も含めて事業全体であり、特許権や著作権、将来の予想収益までもを含みます。
ノウハウなども担保として見てもらうことができるので、スタートアップ企業も資金調達がしやすくなる期待が持たれています。
ただ実際には、今のところ積極的に活用されているわけではないようです。
というもの、ノウハウなどの無形資産を担保としてどのように評価したらよいのか分からないということで、資金を貸し出す金融機関が積極的に活用しないことが多いのです。
手続き的にも手間と時間がかかることや、まだ創設間もない制度であるため事業者側もどう扱って良いのか分からないというのが実情の様です。
近々のうちに利用が急拡大するということはあまり期待できないので、将来的に活用の道が開けるかどうかというところでしょう。
少しずつ認知されるようになれば問題点や課題なども鮮明化してくると思いますので、必要な制度改正を繰り返して使いやすい制度になってくれるかもしれません。
サプライチェーンファイナンスが利用されるようになる?
もう一つ、将来的に利用が増える可能性のるファイナンスサービスを取り上げてみます。
サプライチェーンファイナンスはサプライヤー(商品の売り手)とバイヤー(商品の買い手)との間で行われる商取引を金融機関の視点でみた利益確保のロジックです。
サプライチェーン上でやりとりされる商流情報に着目して、そこにファイナンスを行うことで貸し出し利益を得るというのが基本的な仕組みですが、長く続いていたゼロ金利政策のために金融機関としては利息利益のメリットがなく、本格的に利用されることはありませんでした。
これが最近になって金利のある世界が戻ってきたということで、将来的に金利が上がればごく短期スパンでも利息利益の確保が叶う可能性が出てきました。
サプライチェーンファイナンスが多く用いられるようになった場合、金融機関は売掛債権の現金化、つまりファクタリングも絡めてパッケージとしてサービス提供をしてくる可能性があります。
そうすると我々一般のファクタリング事業者とも競合することになるので、少し心配な面もあります。
ただ金融機関が提供するファクタリングはノンリコースでないのが普通で、売掛先の倒産などで資金回収ができなくなった時には債権譲渡企業が責任を負うことになります。
また銀行のファクタリングは審査が厳しく、二社間取引には対応しません。
取り引きの安全のため三社間取引しか対応しないのが普通ですので、売掛先には債権譲渡の事実を知られてしまいますし、打診しても断られれば承諾が取れないので債権譲渡は叶いません。
信用を失う上に資金調達もかなわないという結果になってしまいます。
その他、小口取引には対応してもらえない、金融機関のデータに記録されるなどのデメリットもあるので、我々一般のファクタリング事業者とのすみ分けは一定程度確保されると思われます。
ファクタリング業界の今後の展望は?
金融業界の動向は我々ファクタリング業界にも強く影響するところですが、弊社も含めファクタリング業界全体として減速を予測させる要素は全く見当たりません。
元々売掛債権等の流動債権を活用した資金調達は国も推進するところですし、民法改正による債権譲渡のハードル緩和や手形取引の縮小などの加速要素がファクタリングを後押ししています。
また昨年2024年の11月には下請法の改正により、60日以内の短期サイトの手形や電子記録債権による支払いが禁止されることになりました。
これは力のある発注者が力の弱い下請け企業に対して不便な決済手段を用いることを禁止するもので、下請け企業保護の意味合いがあります。
反面、支払いをする発注者側としては支払いに用いる現金が無いと困ることになりますから、ファクタリングなどで支払資金を用意しなければなりません。
我々としてはここにもビジネスチャンスを感じるところで、これも業界に追い風になります。
ファクタリング業界全体としては総じて今後も取引拡大傾向にあるということが言えるでしょう。
もう少し踏み込んで将来のファクタリング業界の姿を想像するとすれば、ITやAI技術がさらに進歩しているでしょうから、今よりももっと便利でスピーディな取り引きが可能になることでしょう。
あまり柔軟な想像が利かずもどかしいですが、例えば付き合いのある企業の個別の取引をリアルタイムで同期し、ファクタリング事業者のサイトにアクセスすればアカウントごとに今現在の取引可能額、債権買取可能額などがリアルタイムで確認できるくらいの進展は今の技術でも不可能ではないと思います。
やろうと思えば10年を待たずしてこのようなサービスを実装するところも出てくるのではないでしょうか。
今現状ではファクタリング取り引きやサービス提供事業者を規制するような強い法改正は予定されていませんし、そのような議論がされているという話も聞きません。
法規制が入るとすれば、大きな事件が発生して被害者が出てから、これを問題視した政府が議論を始めるというのがセオリーです。
規制が入れば利用者にとっては安全性が高まる反面、利便性が失われることになるので、業界としても適正なサービス提供に努め、無用な規制を必要としない業界を保っていけるようにしたいと考えています。
まとめ
本章では金融業界及びファクタリング業界の未来について語らせて頂きました。
ファクタリング業界も金融部門の一翼を担う存在ですので、業界の種々の変化については機敏に感じ取りながら運営を続けております。
ファクタリング業界は今後も取引拡大傾向にあり、10年後も活発な取り引きがなされていると予想します。
金融業界全体としてもテック技術の進歩で様々な変化が生まれていくはずですから、今後も皆様にお届けできそうなニュースがあれば随時配信していきます。
ぜひお付き合いを願えれば幸いです。