AIの開発は世界中でしのぎが削られており、日本も技術大国の一角としてこの戦いで主導権を握れるよう各方面で努力が重ねられています。
多くの分野でAIの浸透が図られ、金融機関でも積極的に導入されています。
今般、日本IBMが金融機関向けに提供しているAIサービスを拡張するというニュースが入ってきましたので、今回はこのテーマを取り上げて深掘りしてみましょう。

提供が予定される「DSP 生成AI拡張機能」とは?

DSP生成AI拡張機能

日本IBMはすでに先行するAIサービスを金融機関に提供していましたが、今般その内容を拡張し、総合パッケージとして提供を始めるとアナウンスしています。
個別のアプリケーションの提供に止まらず、AIのモニタリングや制御、インフラ整備までをまとめてパッケージ化するという内容です。
サービス名称としては、金融向けのデジタルサービスプラットフォーム、略して「DSP」がすでに販売され多くの金融機関で導入されています。
今般、そのDSPの機能が拡張するということで、拡張機能の提供は2024年の5月末頃を予定しています。
日本IBMではすでに金融機関に対するサービス提供で存在感がありますから、DSPをパッケージ商品として売り込むことでさらに業界での存在感が増すことになるでしょう。

生成AI拡張機能の3つの要素

生成AI拡張機能の3つの要素

DSP拡張機能は大きく以下の三つの要素から構成されます。

①「アプリケーションズ」

アプリケーションズは金融機関における業務の効率を高めるための各種アプリケーションの集合体です。
行員が利用するチャットなど業務の共通機能を集約し、より効率的な運用を可能にします。
日本IBMでは初期のラインナップとして「融資稟議書作成」、「営業トークスクリプト作成」、「営業日報作成」の支援などを提供する予定です。
サービス提供初年度で10個程度のアプリケーションを提供する予定となっています。

②「ゲートウェイ」

ゲートウェイは生成AIの制御やモニタリングのための機能です。
管理用のダッシュボードを利用してAIへの接続を最適化できる他、不正利用を防ぐ機能も果たします。
制御とモニタリング機能を一元化することで管理の複雑さから解放されることになります。
他社製品との連携も想定され、これにより新たな攻撃手法にも対抗できるようになるとされています。

③「インフラ機能」

金融機関は要求されるセキュリティ水準が一般商社にくらべてはるかに高く、高度なセキュリティ機能が求められます。
高度なセキュリティ機能の実装には通常期間を要しますが、DSPでは最短1日でインフラ環境一式を構築する機能が提供されます。

DSPはどれくらいの金融機関が採用している?

DSPはどれくらいの金融機関が採用している?

今般提供される予定の拡張機能の本体であるDSPは、2023年12月の時点で全国31の金融機関が採用しています。
地銀など各地の金融機関は、自行が必要とする機能を洗い出して外部に開発を依頼するというのがこれまで多く行われてきました。
地元企業への仕事発注という意味合いもあるはずですが、今後はそれよりも最新の先端技術を導入する必要性の方がより重要になるはずです。
そうした時に安心して導入できるパッケージがあれば導入する側としては安心ですから、DSPのようなサービス商品を導入する金融機関は今後さらに増えると予想します。

まとめ

この回では日本IBMが金融機関向けに提供しているAIサービスを拡張するというニュースを取り上げて見てきました。
金融機関では業務の効率化やセキュリティの確保など多くの課題があるところ、AI技術を活用したDSPサービスがかねてより利用されていました。
このサービスの拡張版がリリースされるということで、導入している企業は今年の5月末頃からその恩恵を受けることができるようになります。
少子化等で人材不足の事情にあるのは金融機関も同じで、より効率を求める姿勢が必要です。
預金を預ける側としてはセキュリティが非常に気になるところですので、ぜひ安全を担保した体制確保に尽力してもらいたいと思います。