最近は政府の掛け声もあって個人による投資熱がかなり上がってきている印象ですが、企業レベルでの投資と比べるとやはり規模は小さめです。
企業が行う投資活動は個人のそれとは比較にならないほど多くの金額が投入され、これにより社会経済の活性化が図られるわけですが、同時にリスクに関しても相応に規模が大きくなることに留意が求められます。
企業も他社の株式や債券などを買って投資をしますから、そのリスクについては経営者が必ず知っておく必要があります。
本章では企業が知っておくべき各種金融リスクについて見ていきます。
流動性リスク
流動性リスクはその資産を現金化する際のリスクです。
株式や債券などの資産は、そのままでは決済手段として活用できません。
金銭的価値があるものでも、支払いに使えなければ決済手段として機能しませんから、自社の支払いサイト上で用いることはできません。
必要な時にすぐに現金化できないリスクを流動性リスクと言い、企業経営においては資金ショートの危機が生じた際に流動性リスクが問題となります。
上場株式や債券など取引市場が活発で換金性が高いものは流動性リスクが比較的低いとされます。
流動性リスクが高い資産には不動産などがあり、買い手を見つけて現金化するまでにかなり時間がかかります。
価格変動リスク
金融資産は価格変動が起きる性質があるので、保有資産の価値が目減りすることがあります。
例えば金利が上昇すれば預金の利息利益が増えますが、債権価格は下落傾向となります。
また債権の償還までの期間が長いほど価格変動リスクが上がります。
金利が下がると債権の人気が上がって価格上昇に向きますが、金利が上がると預金方面の人気が上がり債権の人気が落ちるため、価格が下落方向に向きます。
デフォルトリスク
デフォルトリスクは投資対象の相手方が倒産するなどして投資した資金の回収が望めなくなるリスクです。
例えば預金としてお金を預けていた銀行が倒産するとお金を引き出したくてもできなくなり困ってしまいます。
実際には、銀行の場合は日本の法制度によって預金保険制度が整備されているので、一金融機関あたり1000万円までの預金が保護されますから一定の安心ができますが、そのような機能がない株式や債券などの場合は投資した相手企業が倒産すると大変です。
債権はデフォルトリスクを管理するための格付け機関があり、対象企業の債権をAAA、AA、A、BBBなどの記号で格付けしています。
一般的にはBBB以上が投資適格とされ、それ以下の対象はハイリスクとしてジャンク債やハイ・イールド債などと呼ばれています。
投資対象を選ぶ際にはこうした格付けもチェックしましょう。
カントリーリスク
カントリーリスクは個別の銘柄に係るリスクではなく、その投資商品が発行された国にかかるリスクです。
その国の政治的、経済的なリスクが総じてカントリーリスクとなります。
例えば政変により国家が消滅してしまうこともあるでしょうし、経済政策が大きく変わって価格変動が起きることもあります
一般的に先進国よりも新興国のほうがカントリーリスクが高く、リスクを丁寧に調べるには政治の安定度や国際収支、対外債務などの調査が必要です。
インフレリスク
流動性リスクやデフォルトリスクなどの心配が基本的にないのが預貯金です。
バブル末期には金融機関の倒産が問題になったことがありましたが、今はその心配はほぼ無用ですし、上で見たように預金保険制度もあります。
ちなみに預金保険制度は銀行だけでなく信用金庫や信用組合、労金や商工組合中央金庫なども対象になります。
一金融機関当たり1000万円までが保護されますが、これとは別枠で決済用預金は全額保護されるので、事業者はこの点安心です。
ただし預貯金はインフレリスクがあり、物価が上昇した場合は基本的に金利の上昇が追い付くスピードが遅いのでインフレリスクが生じます。
安全資産の代表である預貯金も一定のリスクがあることは知っておきましょう。
まとめ
この回では企業が知っておくべき金融リスクについて見てきました。
金融商品は様々なリスクが存在し、商品によってリスクの高低も異なります。
企業および経営者としては投資対象のリスクについての理解が求められるので、一定の知識は持っておきたいものです。
得てしてリターン面に意識が向きがちですが、リスクの存在についても意識を持つようにしてください。