変化のスピードが劇的に速まっている現代において、経営戦略のありかたや捉え方に難しさを感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
最近のAIの登場に見られるように、社会的にも大きな影響をもたらすのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
この回ではDX時代の経営戦略の在り方について考えてみたいと思います。
■デジタル化とDXの違い
DXの推進は民間企業だけでなく自治体などでも鋭意進められているところです。
国でもデジタル庁を創設するなどして国全体でデジタル化を推進していますが、デジタル化とDXは何か違いがあるのでしょうか。
デジタル化はITなどを駆使して業務の効率化を図ったり、余計なコストの削減や生産性の向上を目指すものですが、それ以上の大きな変革まで求めるものではありません。
DXはそれを超えて既存のビジネスモデルを変えてしまうような大きなインパクトを持つ概念として捉えられています。
この意味で、デジタル化はDXの中に包含される概念として捉えることがきます。
経済産業省によるDXの解釈では、「激しいビジネス環境変化に対応し、データとデジタル技術を活用し、社会のニーズを基にして製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること、これとともに組織や企業文化を変革し、競争上の優位性を確立すること」として捉えています。
ここではひとまずDXはデジタル化を超えて、ビジネスモデルを根本から作り変え、市場での優位性を確立するための手段であるという認識で良いかと思います。
■今DXを意識すべき理由
経営者がDXを意識すべき理由はいくつかあります。
主だったものをいくつか挙げてみましょう。
①顧客からの要請
ビジネスは市場があって成り立つもので、その市場の顧客はより自分にふさわしい商品やサービスを愚直に追及する性質が強まっています。
より手軽に、より素早く、より楽しめる、より自分にマッチしたサービスや商品を追及します。
デジタル化はもとよりDXを推進することがその要請に応える手段となります。
②テック技術の深化
対応するテック技術も速いテンポで深化及び進化を見せています。
AI技術などに代表されるテック技術の発展は今後も止まることはありません。
企業としてはこの波に乗り遅れるとすぐに競争上劣位に立つことになり、顧客から見放されてしまいます。
時代の波に乗り続けることは昔よりもハードルが上がっていますが、それでも後れを取らないようにしなければなりません。
③人口減少
ほぼ全ての業種で人口減少による労働力の不足が深刻化しています。
働き手が絶対的に少ない中でビジネスを加速させるには、ビジネスモデルを変える力のあるDXの推進が欠かせません。
④海外勢の圧力
海外の企業は有能な若手人材を登用してグローバルにビジネス攻勢を仕掛けてきます。
国内勢がこれに対抗するには優秀な人材の開発育成と並行してDXの活用による新路の開拓を進める必要があります。
■DX推進のポイント
企業におけるDXの推進はそう簡単なものではありません。
ここでは企業DX推進のポイントを見ていきます。
①強力なリーダーシップ
DXを進めるにあたっては高い確率で社内の抵抗が起きるので、強力なリーダーシップの下である意味強制的に進めていかないと前に進みません。
経営者自身が強いリーダーシップを取りつつ、他の役員などの経営層も一丸となって進める姿勢を下部組織全員に見せる必要があります。
従業員全体を巻き込むために、DX推進の目的やその効果を丁寧に説明する、ワークショップやセミナーなどの媒体を通じて社員の意識変革を図るなどの浸透策が必要になるでしょう。
②デジタル人材の育成
社内で中核的役割を担うデジタル人材の育成は時間がかかりますし、簡単にはいきません。
充分な時間をかけて研修を行いスキルアップや意識改革を進めなければなりませんし、そのためには外部の専門家の助力が必要になる事も多いと思います。
可能であれば即戦力となる人材を登用してDX推進の特別チームを編成するということも考えられます。
③セキュリティ対策
DX推進にあたってはセキュリティ対策が重要になります。
AIなどを活用した異常の自動検知システムを構築したり、人的リスクを減らすための従業員の意識向上を図ることも大切です。
④コンプライアンス対策
セキュリティ対策と同様にコンプライアンス対策においても従業員個々人の意識向上が求められます。
個人情報保護法の理解と実務対応などは法務部門の協力の元で進めるのが安全です。
■まとめ
この回ではDX時代の経営戦略の在り方について考えてみました。
DXはデジタル化の先にある、ビジネスモデルの変革をもたらすインパクトのあるものです。
経営者のリーダーシップは不可欠ですが、社長一人で推し進めるのは困難なケースが多いと思われます。
経営層はもとより、中核人材の確保、育成を図りながら時間をかけて進めていきましょう。