国の根幹は経済にあり、経済の根幹は企業活動にあり、企業活動の根幹は起業家や経営者の奮闘にありということで、日本経済を支える経営者の皆様、そして果敢に挑戦する起業家の方々には頭が下がる思いです。
特にこれから新規に起業を考える方は被雇用者とは全く違う世界に新たに飛び込むことになるので、そのリスクについて心配に思っておられると思います。
本章では起業家のためのリスク管理について複数の観点から見ていきますので、参考にしていただければ幸いです。

リスクなしで起業することは可能か?

リスクなしで起業することは可能か?誰もがリスクを避けたいと考えるでしょうけれど、リスクなしで起業するのは不可能です。
被雇用者として働くにしても解雇されたりパワハラの被害に会うリスクなどからは逃げられませんよね。
起業して経営者となる場合、被雇用者とはまた違ったリスクを背負うことになり、この宿命からは逃れることはできません。
これを悲観していては先に進まないので、起業するのであればどのようなリスクがあり、どうやって対処していくのかを考える必要があります。
リスクを正しく捉えて対処すれば必要以上に恐れることはありません。
起業に際してどのようなリスクが考えられるのか見ていきましょう。

資金面のリスク

資金面のリスクまずは資金面に関するリスクを見ていきます。
企業経営では様々な費用がかかりますが、起業~事業を継続していくに際しては以下のような費用がかかり、資金が途中で枯渇すると事業継続が難しくなります。

①起業準備段階でかかる費用

起業準備の段階でも結構な費用がかかります。
WEBサイトの作成や運用、PCやプリンタなど機材の調達、名刺の作成、必要な許認可を取るための費用、法人を設立する場合はその費用、その他諸々の出費がかかります。
ビジネスモデルによってこれらの負担は大きく変わってくると思いますが、最低でも数十万円程度の出費がかかることが多いと思います。

②運転資金

起業した後は運転資金が継続してかかります。
光熱費やテナント料、通信費などは売り上げが上がらなくても継続して発生します。
起業当初は売り上げを出すのに苦労することが多いので、半年程度は売り上げがなくても大丈夫なようにあらかじめ余裕資金を確保しておくことが望まれます。

③従業員の給与

従業員を雇用する場合は給料の支払いが必要です。
給料も売り上げがなくても支払いが必要なので、人を雇用すべきかどうか、するとしたら時期をどうするかよく考えましょう。
起業には以上のような資金が必要になるので、資金調達面のリスクについて理解が必要です。
起業後は銀行融資などを利用することも視野に入りますが、起業準備段階までは被雇用者として働きながら、給料をもらいながらでも可能です。
会社を辞める時期についてもよく考えましょう。

事業運営上のリスク

事業運営上のリスク事業を開始した後の運営上のリスクには以下のようなものがあります。

①従業員管理のリスク

従業員を雇う場合はお給料のこと以外にも神経を使います。
安全管理面や雇用環境の整備は経営者の責任です。
最近問題になりがちなパワハラやセクハラなどのハラスメント対策も社長が主導で進めなければなりません。

②収益をあげられないリスク

事業の本筋となるのが利益の確保です。
会社の使命は収益を上げることであり、経営者の至上命題でもあります。
起業を考える段階で十分な構想を練るとは思いますが、必ず思い通りにいくとは限りません。
事業計画を作成したら、外部の目を入れるために一度専門家にチェックしてもらうのがお勧めです。

③売掛金の回収リスク

国内の多くの企業は掛け取引をしています。
サービスや商品を売る側はしばらくお代を頂けませんから、その間の資金繰りに苦慮することがあります。
特に起業当初は資金面で脆弱なため、新規取引の際には売掛金の支払期日を早めにしてもらえるように交渉が必要なこともあります。
商売経験が無いと売掛金の管理が上手くいかなかったり、上手な督促の仕方が分からずに代金をなかなか徴収できないこともあります。
売掛金が回収できないと早晩に資金ショートの危機となるので注意が必要です。

④災害等のリスク

近年、世界はもとより日本でも災害リスクが高まっている印象です。
平時のことだけでなく、豪雨や地震など災害が起きた場合の社内の行動規定を策定するなどして万が一に備えなければなりません。

⑤倒産のリスク

考えたくないことですが、会社を経営する以上は倒産の可能性は0ではありません。
経営者は個人保証として会社の連帯保証人になる事が多いので、会社と一蓮托生の関係です。
倒産を避けるよう全力を尽くすべきですが、万が一そのリスクに直面したら早めに専門家相談することで経営者個人のダメージを最小限に抑えられます。

法律面のリスク

法律面のリスクともすると意識が向きにくい法律面のリスクには以下のようなものがあります。

①許認可のリスク

事業を行うために許認可が必要な場合は、確実に許認可が取れるか専門家に相談するなどして確証を得ておく必要があります。
許認可が取れそうな場合は、申請してから時期的にいつころ取れるのかについても確認が必要です。

②法改正のリスク

法律は割と頻繁に改正が入るものもあり、これが事業を進めるのに関係する場合は法改正によって事業ができなくなったり、思うように事業展開できなくなる可能性があります。
関係する法律に関しては改正情報をすぐにキャッチできるようにしておきましょう。

③損害賠償リスク

事業上で取引先などに損害を与えた場合、損害賠償の責任が生じることがあります。
法人の場合は基本的に経営者個人の責任には及びませんが、個人事業の場合は経営者個人に責任がダイレクトに及ぶので注意が必要です。

④バイトテロなど

未だにテレビ等で話題になる事があるバイトテロなども経営者にとって大きなリスクです。
顧客に迷惑をかければ損害賠償の責任が生じる可能性がありますし、事案によっては事業停止や廃業にもつながる危険があるくらい大きなインパクトを持ちます。
事業運営上のリスクや雇用管理のリスクにも通じますが、末端まで従業員教育を徹底する必要があります。

プライベート面のリスク

プライベート面のリスク経営者個人やその家族などプライベート面に関するリスクです。

①健康管理に関するリスク

起業当初の経営者は忙しさから自分の健康管理を疎かにしがちです。
運動不足や睡眠時間が削られて健康を害することもしばしばですので、自身の健康管理には常に気を配っておかなければなりません。

②仕事でプライベートがおろそかになるリスク

健康管理にもつながりますが、特に起業当初は仕事のことしか考えられなくなる時期もあります。
仕事にまい進するのは悪いことではありませんが、休日もなく仕事一辺倒になるとプライベートがおろそかになり、人生の楽しみを失ってしまうかもしれません。
知らず知らずのうちに精神的なストレスが溜まって不調をきたすことになれば、仕事も上手くいかなくなってしまいます。

③家族の気持ちが離れてしまうリスク

家族が応援してくれていると非常に心強いですが、仕事に没頭するあまり家族に気持ちが向かなくなるとよくありません。
応援してくれていたはずが、いつの間にか心が離れてしまうことになれば大切な存在を失うことになります。
忙しくても家族との時間を取れるように工夫してください。

④倒産に家族を巻き込んでしまうリスク

万一会社が倒産することになれば家族にも迷惑がかかります。
その後の生活が不安ですし、経営者が会社の個人保証をしていた場合は経営者個人の自己破産も考えなければなりません。

リスクを正しく捉えて起業に臨むべし

リスクを正しく捉えて起業に臨むべし起業のリスクを挙げると様々ありますが、リスクを恐れていては起業などできるものではありません。
リスクがあることを理解したうえで、それに備えながら起業を考えるのが正しい姿勢と言えるでしょう。
そうはいってもできるだけリスクは避けたいのが本音ですよね。
できるだけリスクを避けるには、ビジネスを小さく始めて大きく育てる意識で始めてみるのがお勧めです。
小さく始めれば軌道修正が利きやすいですし、多額の資金を必要としないので万が一の際のダメージも最小限で済みます。

まとめ

この回では起業に際してのリスク管理について見てきました。
起業には様々なリスクがありますが、どのようなリスクがあるのか理解して臨めば十分対処は可能です。
起業の勉強会などに参加すれば過去の失敗事例など生の声を聴くことができるので大変参考になります。
機会があれば勉強会やセミナーに参加してリスク管理に役立ててください。