事業を成長させるために、銀行融資や公的機関からの借入といった資金調達を検討する経営者は少なくありません。しかし、資金を「どう手に入れるか」だけに意識が向きすぎてしまい、「どう返していくか」という視点が後回しになってしまうケースが多く見られます。返済計画が甘いまま資金調達を進めてしまうと、事業が軌道に乗り始めた頃に資金繰りが悪化し、経営そのものを圧迫してしまう危険性があります。
本記事では、資金調達の前に必ず確認しておきたい「返済計画」の立て方について、具体的な考え方やステップ、注意点を詳しく解説します。これから融資を申し込む方はもちろん、すでに借入を検討している方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
なぜ資金調達の前に返済計画が必要なのか

資金調達を行う際、金融機関は「事業計画書」や「資金使途」を重視しますが、それと同じくらい重要視されるのが「返済能力」です。返済計画が明確でなければ、そもそも審査の段階で融資を断られてしまう可能性があります。
また、審査に通ったとしても、返済計画が現実的でなければ、事業のキャッシュフローを圧迫し、本来事業に使うべき資金が返済に回されてしまうことになります。特に創業初期や事業拡大期は売上が安定しないことも多く、無理な返済計画を立ててしまうと、資金繰りのショートを引き起こしかねません。
返済計画をしっかり立てることで、以下のようなメリットが得られます。
・金融機関からの信頼性が高まり、審査が通りやすくなる
・事業の収益とキャッシュフローを客観的に把握できる
・無理のない借入額を判断できる
・将来的な資金繰りのリスクを事前に把握し、対策を立てられる
つまり、返済計画は「借りるための手段」であると同時に、「事業を守るための経営ツール」でもあるのです。
返済計画に必要な3つの要素

返済計画を立てる際には、次の3つの要素を明確にしておく必要があります。
1. 借入金額と使途の明確化
まず、いくら借りるのか、そしてその資金を何に使うのかを具体的に決めます。設備投資、人件費、仕入れ資金、広告費など、使途によって資金の回収スピードが異なるため、使途を明確にすることは返済計画の土台になります。
2. 返済期間と返済方法の設定
借入金額が決まったら、何年で返済するのか、毎月いくら返済するのかを設定します。返済方法には「元金均等返済」と「元利均等返済」があり、それぞれ月々の負担額や総返済額が異なります。事業の収益パターンに合わせて、どちらが適しているかを検討する必要があります。
3. 収益予測とキャッシュフローの見通し
最も重要なのが、実際にその返済額を無理なく支払えるかどうかの見通しです。売上予測、経費予測をもとに、毎月どれくらいの現金が残るのかをシミュレーションし、返済額がその範囲内に収まっているかを確認します。
返済計画の立て方【5つのステップ】

ここからは、実際に返済計画を立てる際の具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:事業計画と資金使途を整理する
まずは、資金調達の目的と使途を整理します。「なぜこの資金が必要なのか」「その資金でどれだけの効果が見込めるのか」を数字で示せるようにしておくことが重要です。使途が曖昧なままでは、返済計画も曖昧になってしまいます。
ステップ2:損益計画とキャッシュフロー計画を作成する
次に、今後1年から3年程度の損益計画とキャッシュフロー計画を作成します。売上、原価、経費、税金などを具体的な数字で見積もり、毎月・毎年どれくらいの現金が事業に残るのかを可視化します。この時点で、楽観的すぎる予測になっていないか、慎重に見直すことが大切です。
ステップ3:返済可能額をシミュレーションする
キャッシュフロー計画をもとに、毎月どれくらいの金額を返済に充てられるかを計算します。一般的には、毎月の手元資金の余剰分のうち、7割から8割程度を返済の上限とし、残りは予備資金として確保しておくことが望ましいとされています。すべてを返済に充ててしまうと、予期せぬ支出に対応できなくなるためです。
ステップ4:複数のシナリオで検証する
売上が計画通りに伸びるケースだけでなく、売上が伸び悩むケース、逆に予想以上に伸びるケースなど、複数のシナリオを想定して返済計画を検証します。特に「悪化シナリオ」でも返済が継続できるかどうかを確認しておくことで、計画の実現性が高まります。
ステップ5:返済スケジュール表を作成する
最後に、借入額、金利、返済期間、返済方法をもとに、月ごとの返済スケジュール表を作成します。この表があることで、金融機関への説明資料としても活用できますし、自社の資金繰り管理にも役立ちます。
返済計画を立てる際に注意すべきポイント

返済計画を立てる際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
売上予測を楽観的に見積もりすぎない
資金調達を成功させたいという思いから、売上予測を高めに設定してしまうケースは少なくありません。しかし、楽観的な予測に基づいた返済計画は、実際の事業運営で破綻しやすくなります。堅実な予測を基本とし、上振れは「余裕」として扱う姿勢が望ましいです。
固定費と変動費を正確に把握する
返済額を検討する際には、売上だけでなく、固定費と変動費を正確に把握しておくことが欠かせません。特に人件費や賃料といった固定費は、売上が落ち込んだ際にも変わらず発生するため、返済計画に大きな影響を与えます。
複数の借入がある場合は総返済額で考える
すでに他の借入がある場合は、新たな借入と合わせた総返済額で無理がないかを確認する必要があります。個別の借入だけを見て「返済できる」と判断してしまうと、複数の返済が重なった際にキャッシュフローが悪化するリスクがあります。
返済猶予や借り換えの選択肢も知っておく
事業環境の変化によって、当初の計画通りに返済できなくなる可能性もあります。そうした場合に備えて、返済猶予(リスケジュール)や借り換えといった制度があることも事前に知っておくと、いざという時の心の余裕につながります。
まとめ

資金調達の前に返済計画をしっかりと立てることは、融資審査を通過するためだけでなく、資金調達後の事業運営を安定させるためにも非常に重要です。借入金額と使途の明確化、返済期間と方法の設定、収益予測とキャッシュフローの見通しという3つの要素をベースに、複数のシナリオを想定しながら現実的な計画を立てることが求められます。
「借りられるかどうか」だけでなく、「無理なく返せるかどうか」という視点を持つことが、事業を長期的に成長させるための第一歩です。資金調達を検討する際には、本記事で紹介したステップを参考に、じっくりと返済計画を練ってみてください。