物価高や人手不足、賃上げ要請など、中小企業を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。そんな中で心強い味方になってくれるのが、国や自治体が用意している補助金・助成金制度です。
2026年(令和8年)度は、旧IT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されたり、「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合されたりと、制度の再編が進んでいる年でもあります。本記事では、2026年7月時点で申請受付中、またはこれから申請受付が始まる主要な補助金・助成金を厳選してご紹介します。自社の事業計画に合った制度を見つけるための参考にしていただければ幸いです。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。公募内容は変更・追加される場合がありますので、実際の申請にあたっては必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
目次
1. 事業承継・M&A補助金(十五次公募)

後継者不在や事業承継、M&Aによる経営資源の引き継ぎを検討している事業者を対象とした補助金です。2026年5月22日に十五次公募の公募要領が公開され、申請受付期間は2026年6月19日から7月24日17時までとなっています。まさに今、申請の真っ最中の制度です。
十五次公募の大きな特徴は、小規模事業者でも活用しやすい新類型「専門家活用枠 小規模売り手支援類型」が新設された点です。これにより、M&Aの仲介手数料などについて上限150万円までの補助を受けられるようになりました。
制度全体は「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「PMI推進枠」「廃業・再チャレンジ枠」の4つの枠で構成されており、最大2,000万円までの支援を受けられる可能性があります。専門家活用枠では、M&A仲介手数料やデューデリジェンス費用などが対象経費となり、補助率は原則2/3です。ただし、交付決定前に専門家との契約を締結してしまうとその費用は補助対象外となるため、スケジュール管理には十分な注意が必要です。
申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、取得までに2〜3週間程度かかることもあるため、締切間際に慌てないよう早めの準備をおすすめします。
なお、事業承継促進枠の対象経費には、設備投資費用のほか店舗や事務所の改築工事費用なども含まれます。専門家活用枠では仲介手数料やFA費用、デューデリジェンス費用が中心となり、PMI推進枠では統合後の体制構築にかかる費用もカバーされます。過去の公募実績を見ると採択率はおおむね60%前後で推移しており、決して狭き門ではありません。事業計画書の完成度や賃上げへの取り組み姿勢が採択のポイントになるため、早めに専門家と相談しながら準備を進めるとよいでしょう。
2. デジタル化・AI導入補助金

旧IT導入補助金から名称が変わった制度で、業務効率化やDX推進のためのITツール導入を支援します。基本的な仕組みは従来のIT導入補助金を踏襲しており、「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数者連携デジタル化・AI導入枠」の5つの申請枠が用意されています。
2026年度は年6〜7回程度の締切が予定されており、現在は第4次締切(2026年8月25日締切)に向けた申請が可能な状況です。7月中に申請準備を進めておけば、余裕をもって次の締切に間に合わせることができます。会計ソフトや受発注システム、AIを活用した業務改善ツールなど、幅広いITツールが対象となる点が魅力です。
補助率や補助上限額は申請枠によって異なり、インボイス枠では小規模な会計ソフト導入でも活用しやすい設定になっているのが特徴です。複数の中小企業が連携してITツールを導入する「複数者連携デジタル化・AI導入枠」では、より大規模な業務効率化への取り組みも支援対象となります。導入したいITツールを提供するIT導入支援事業者が事前に登録されている必要があるため、まずは自社が利用したいツールの提供事業者が登録済みかどうかを確認するところから始めましょう。
3. 中小企業省力化投資補助金(一般型・第7回)

人手不足に悩む中小企業を対象に、IoTやロボットなどの省力化製品導入を支援する補助金です。2026年7月上旬から下旬にかけて第7回の公募要領が公開・申請受付される予定となっています。
この補助金の特徴は、あらかじめ登録されたカタログの中から省力化製品を選んで導入できる「カタログ注文型」に加え、自社の課題に合わせて自由に設備投資計画を立てられる「一般型」がある点です。一般型は補助上限額が大きく、大規模な設備投資にも対応できるため、製造業や小売業、飲食業など幅広い業種で活用が進んでいます。
4. 新事業進出・ものづくり補助金(次回公募に向けた準備)

2026年度からは、これまで別々に運用されていた「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合され、新たに「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」としての運用が予定されています。新事業進出補助金の第4回公募(申請受付5月19日〜6月19日)はすでに締め切られており、7月は次回公募の詳細発表を待つ時期にあたります。
新制度では「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3区分が想定されており、賃上げに取り組む事業者への支援を強化する方針が示されています。次の公募開始に備えて、事業計画書や賃上げ計画の骨子を今のうちから整理しておくとスムーズです。
5. 小規模事業者持続化補助金(次回公募の準備期間)

個人事業主や小規模事業者の販路開拓を支援する定番の補助金です。チラシ作成やホームページリニューアル、店舗改装など、比較的使いやすい経費が対象になることで人気があります。
第20回(一般型・通常枠)および創業型第4回の公募要領はすでに公開されており、申請受付は2026年11月5日から12月15日に確定しています。7月時点ではまだ申請受付前ですが、経営計画書の作成には時間がかかるため、早めに準備を始めておくことで、いざ受付が始まった際にスムーズに申請できます。
6. 厚生労働省系の助成金(通年申請が可能)

補助金と異なり、要件を満たせば原則として通年で申請できるのが助成金の特徴です。競争審査がないため、該当する取り組みがあれば積極的に活用したい制度です。
業務改善助成金
事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上のための設備投資を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。
キャリアアップ助成金
非正規雇用の労働者を正社員に転換したり、処遇を改善したりした事業主を支援する制度で、正社員化コースや障害者正社員化コースなど複数のコースがあります。
両立支援等助成金
育児や介護、不妊治療などと仕事の両立を支援する職場環境を整備した事業主向けの助成金です。柔軟な働き方の導入や、女性特有の健康課題への対応支援なども対象になります。
いずれも年度によって要件や支給額が変更されることがあるため、申請前には厚生労働省や労働局の最新情報を確認することをおすすめします。
7. 地方自治体独自の補助金・助成金もチェックしましょう

国の補助金・助成金だけでなく、都道府県や市区町村が独自に実施している支援制度も見逃せません。例えば東京都では、中小企業の生産性向上や賃上げを後押しする独自の助成金制度が複数用意されており、国の補助金と組み合わせて活用できるケースもあります。地域によっては、空き店舗を活用した創業支援や、観光関連事業者向けの補助金など、その土地ならではのユニークな制度も存在します。
自社が所在する自治体のホームページや、商工会議所・商工会の窓口で最新の公募情報を確認することで、国の制度だけでは対応しきれない細やかなニーズに合った支援を受けられる可能性があります。国と地方、両方の制度にアンテナを張っておくことが、資金調達の選択肢を広げる近道です。
申請にあたっての注意点

各制度に共通して押さえておきたいポイントをまとめます。
GビズIDの早期取得
多くの補助金はJグランツでの電子申請が必須で、GビズIDプライムアカウントの取得に数週間かかることがあります。
賃上げ要件への対応
2026年度は賃上げに取り組む事業者を優遇する制度が増えています。自社の賃金引き上げ計画とあわせて検討しましょう。
実績報告の期限厳守
採択後の実績報告が遅れると、交付決定が取り消されるリスクがある制度もあります。事業完了後は速やかに報告する体制を整えておきましょう。
専門家への事前相談
認定経営革新等支援機関や中小企業診断士に相談することで、採択の可能性を高められる場合があります。
まとめ

2026年7月は、事業承継・M&A補助金の申請受付が佳境を迎え、デジタル化・AI導入補助金や中小企業省力化投資補助金の準備も進めやすい時期です。また、11月から始まる小規模事業者持続化補助金や、次回公募が発表される見込みの新事業進出・ものづくり補助金など、少し先を見据えた準備を始めるのにも良いタイミングといえます。
補助金・助成金は制度改正が頻繁に行われるため、常に最新情報をキャッチアップすることが成功への近道です。自社の事業計画や資金ニーズに合った制度を見極め、必要であれば専門家の力も借りながら、賢く制度を活用していきましょう。