円安による弊害が強く叫ばれてきたここ数年で、特に対米ドルとの関係では輸入企業の苦境だけでなく、海外旅行に出かけた日本人旅行者からはラーメン一杯5千円だったなどの驚きの声も届けられてきました。
世界の通貨は為替という概念に作用して様々な経済効果を生み出し、これによって得をする人もいれば損をする人も出てきます。
世界の中心である米ドルがやはり主役ですから、この動向は常に気にされる存在です。
本章ではアメリカのドルに注目し、ドル高が世界経済に与える影響についてみていきたいと思います。

ドル高とはどういう状態?

ドル高とはどういう状態?

ドル高は、米ドルを主体として見た場合に他国の通貨に対してドルの価値が高い状態を言います。
逆に他国の通貨を主体として見た場合には、自国の通貨が米ドルに対して弱い、つまり自国通貨の価値が低い状態を指します。
例えば米ドルと日本円との関係で言えば、これまで円安ドル高を言われてきました。
これは、日本円に対して米ドルの方が価値が高い、逆に言うと日本円が米ドルに対して価値が低いことを指します。
仮に1ドル130円だとすれば、アメリカの1ドルを買うのに日本円で130円を出す必要があります。
これがドル高に振れて1ドル150円になると、1ドル買うのに150円出さなければならなくなります。
ドルに対して円の価値が下がり、より高いお金を出さなくては物が買えないということです。
基本的に米ドルは日本以外の他国の通貨に対しても高価値でドル高になりやすい性質があるので、アメリカの政府は過度にドル高に振れないように各種の政策を講じています。
ドル高に振れると輸入企業は他国のモノが安く買えて儲かりますが、他国視点で見るとドル高によりアメリカのモノが高くなるので輸入しづらくなりますから、アメリカのモノが売れなくなります。
輸出企業は苦しくなるので、次期大統領のトランプ氏はこれを嫌がっています。
ドル高は輸出の減少と輸入の増加によって貿易赤字や経常赤字を拡大させる方向に作用すると考えられ、実体経済への悪影響がでるのではないかと心配されています。

ドル高に対して各国が取る対応は?

ドル高に対して各国が取る対応は?

ドル高に対して各国が取れる対応は限られています。
日本でも以前為替介入を行ったことがあり、これは投機的な動きがあまりに強まったため、政府の介入が必要だと判断したからです。
基本的にこの問題に政府として介入することはNGとされているので政府が積極的にアナウンスすることは無いのですが、自国通貨買いで下支えをすることで通貨間のバランスを是正しようとするのが為替介入です。
しかし安易な介入は市場をゆがめるのでNGとされており、やりすぎると相手の通貨国から嫌われます。
実際にアメリカのFRB高官も日本の為替介入に対し、一般的な話としたうえで安易な介入は控えるべきと否定的な意見を発し牽制していました。
最近は次期トランプ政権のドル高是正の姿勢に期待するところもあってか為替介入の話題は聞こえてきませんが、今後どうなるのかについては誰も正確な予想ができないのが実情でしょう。
いずれにしても、次期トランプ政権がどのような姿勢で臨むのか、もっと言えばトランプ氏個人がどのような言動をするのかによってベクトルは大きく変わります。
良くも悪くもトランプ氏の影響力は相当の力を持っています。

まとめ

まとめ

この回ではドル高が世界経済に与える影響について見てきました。
ドル高が過度に進むとアメリカ国内の輸出が低迷し貿易赤字を生む懸念があり、世界的にはモノの流通にも影響が出てサプライチェーンにも影響が出るかもしれません。
現在、日本を含め主要国は自国産業に影響が出ないように資源確保やサプライチェーンの見直しなどを行っているところです。
為替もサプライチェーンに影響を及ぼす要素ですので、特に貿易関係者は気を揉むことになります。