給料をもらうだけのやる気のない従業員は会社にとってお荷物になるだけでなく、他の社員にも悪い影響を与えてしまいます。
この問題への対応で頭を悩ませる経営者の方も多くいらっしゃると思いますが、社員がモチベーションを高められる企業文化を構築できれば自動的に会社が良い方向に回ってくれます。
この回では社員のモチベーションを高める企業文化の構築について考えてみましょう。
■企業文化とは?
企業文化の概念として何らかの規定があるわけではありませんが、一般的にはその企業が発足当初から脈々と培ってきた歴史と、それに伴って醸成された価値観や文化などを総称して表現されることが多いです。
社員のモチベーションを自然と高められる企業文化が醸成されることで、企業の生産性向上に寄与することが知られています。
モチベーションには内発的モチベーションと外発的モチベーションがあり、前者は本人が個人的に持っている興味や関心から引き出される意欲、やる気を意味します。
後者は例えば昇進や昇給、ボーナス、インセンティブなど外的要素によって引き出される意欲、やる気を意味します。
どちらが良い悪いの関係ではなく、どちらもモチベーションを引き出す要因となるものです。
まずは内発的モチベーションを高める方法から見ていきましょう。
■内発的モチベーションを高める方法
①裁量を与える
指示された仕事だけを黙々とこなすだけの仕事に嫌気がさして止めてしまう人は今も昔も多くいます。
管理職だけでなく、下層のプレイヤー社員にも可能な範囲で裁量を与えることで社員の自発性を引き出すことができます。
②適性のある職務を与える
会社組織の中では一般的に自分がやりたいと思う仕事、興味のある仕事に必ずしも就けるわけではありません。
組織運営を考えれば仕方のないことですが、その中でも社員の希望を聞いてできるだけ希望に沿った仕事を任せられるように配慮しましょう。
本人が興味のある仕事、適性のある仕事であれば「やらされてる感」を感じることなく、自ら率先して仕事に取り組んでくれるはずです。
この仕組みを考えるにあたっては、「配属ガチャ」というワードが最近聞かれるようになりました。
一旦興味のない部署に配属されてしまえば、最低1年間は地獄を味わわなければならないという趣旨でこう呼ばれるようです。
このミスマッチを防ぐにはやはり丁寧なヒアリングが大切です。
また社員自身がどういった仕事に適性があるか分かっていないことも多いので、例えば数か月や半年などの短期のお試し異動期間を設けて適性を図ってみるということもできます。
③部署・チーム内での役割を明確にする
仕事の内容によっては独任職的にその人一人だけで仕事が完結するものもありますが、多くの場合は部署や所属チーム全体で仕事を遂行します。
その部署やチーム内で信頼関係を構築することがまず大切になり、これにはオープンな雰囲気を醸成することが有効です。
さらにその部署、チーム内で自身が役に立っている実感を持てるようにすれば、チームへの帰属感が生まれモチベーションアップにつながります。
④スキルアップを支援する
その人が興味のある分野であれば、自ら勉強して深い知識を得たいと思うことでしょう。
会社としてそれを支援してあげれば、さらに社員のモチベーションアップにつながります。
業務に関連する資格取得などを会社として応援する仕組みを作れないか検討してみましょう。
■外発的モチベーションを高める方法
①報酬体系を充実させる
外発的意識を高める方法として金銭的な満足感を与えるのがシンプルな手段です。
基本給を高めることは有効ですが、なかなか簡単にいかないことも多いでしょう。
インセンティブとして歩合給的なご褒美を用意する、ボーナスとして一時金の支払いで魅力感を出すなどの工夫と組み合わせて考えてみてください。
②福利厚生の充実
直接的な報酬以外に、社員は家族手当や家賃補助、子育てなどの支援も大いに期待しています。
こちらは退職までの長い人生を安心して暮らしていくための支援であり、これが充実することで会社への帰属意識も高まります。
近年は特に子育て、あるいは高齢となった両親のサポートなどで私生活が仕事に影響することが多くなっています。
短時間の休みを取りやすくする、その際に周りの社員にできるだけ負担がかからないような体制を整えることも大切になります。
この分野ではファイナンシャルウェルビーイングの考えを取り入れる企業が増えていることも知っておきましょう。
ファイナンシャルウェルビーイングは資産の形成、管理などの面で満足を得てもらうという考え方で、会社として社員個人の資産形成を支援する仕組みを導入する例が増えています。
単に働いて給料をもらう、与えるという関係にとどまらず、長い人生に寄り添って資産形成をサポートすることで将来の不安を感じることなく、安心して働いてもらおうという趣旨です。
例えば給与から天引きして資産形成を図れる財形貯蓄や今はやりのNISA、住宅確保のための社内融資などの支援、退職金の有効活用や税金、社会保障などの相談に応じられる体制を導入してファイナンシャルウェルビーイングを提供しています。
③納得できる評価制度
自身の働きに対して納得できる評価を得られる公平な評価制度になっていないと社員はやる気を失ってしまいます。
社員の評価制度については専門的な知識が必要で、経営者の方は勉強会に参加するなどして皆さん知識を得るように努めています。
難しいようであれば社会保険労務士や人事コンサルタントなどに相談することもできるので、社員が納得できる評価制度の構築に努めてください。
■高めたモチベーションを維持することも大切
一時的にモチベーションが上がっても、これを維持できないとあまり意味がありません。
モチベーションを維持できるように以下のような施策も考えてみましょう。
①褒め合あえる雰囲気づくり
社員同士がお互いの良い所を褒め合い、得意な分野について教え合えるような組織を目指したいものです。
あまり褒め合う文化が無い場合、強制的に褒める練習をするというのも手です。
講師を招いてセミナー形式を取り、小グループを作って他者の良い所を探してもらい、これを言葉に出して褒める、ということを練習します。
実際、社員同士で褒め合う練習を時間を取って定期的に実施している会社は増えています。
最初は半ば強制的にであっても、これが身について日常でも自然と褒め合える雰囲気が作られるのでぜひ検討してみてください。
②上司や経営層との面談ができる仕組み
定期的、あるいは社員が望んだタイミングで上司や経営層に相談事ができる仕組みがあると双方にとって有意義です。
社員にとっては不満があれば直接伝えられますし、上司や経営層側は現場社員の不満を吸い上げて認識できるチャンスです。
③労働環境の整備
ワークライフバランスの重要性は年々増しています。
プライベートで充実感を感じられないようだと社員の満足度は簡単に低下してしまうので、オフの時間を十分に取れるように意識しましょう。
休みの日にも上司から電話がかかってくる、などの例は最近でもよく聞きますが、これだとオフの時間を安心して過ごせません。
プライベートは完全オフとなるように会社としても徹底してください。
■まとめ
本章では社員のモチベーションを高める企業文化の構築について考えてみました。
社員はそれぞれ個性があり、置かれた環境もそれぞれ違いますから、万人にマッチする施策を画一的に整備するのは難しい面がありますが、それでもできるだけ多くの社員のモチベーションを上げられる環境づくりが求められます。
個別の企業、あるいは経営者だけでは良いアイデアが浮かばない場合、他の経営者の意見や経験、実際に導入している施策などを参考にすることもできます。
経営者同士の集まりなどに参加した際にはぜひ他社の取り組み事例などを聞いて、参考にできそうなものを取り入れてみましょう。