今でこそファクタリングは借り入れや融資に代わる新しい資金調達法として認知されるようになりましたが、知名度が急上昇してきたのはここ数年~十数年の話です。
ITやAI技術の発達で利便性が向上したことも手伝い、今ではメインの資金調達手段として活用する経営者も多いと思いますが、かつてはなかなか取引数が伸びない時期もありました。
本章ではファクタリングの歴史に目を向け、どのような過程で我が国にファクタリングが導入され、利用が進められてきたのか見ていきたいと思います。

■古くは海外発祥に起源を持つ

古くは海外発祥に起源を持つ

ファクタリングの原型は古く16世紀頃に発祥したとされています。
19世紀頃には売掛債権の概念が生まれ、今の取引に似た形態が生まれたとされ、これが20世紀になってアメリカで盛んに利用されるようになりました。
近現代になってアメリカから諸外国にもファクタリングが伝わり、海外では盛んに取引が行われるようになります。
日本には1970年代になってようやくファクタリングが伝わりましたが、この時すでにアメリカではファクタリングによる資金調達はごく一般化され、どこでも普通にみられる手法として成熟したシステムになっていました。

■日本でファクタリングが始まったのは70年代から

日本でファクタリングが始まったのは70年代から

アメリカですでに一般的な手法として採用されているのだから、日本に導入されればすぐに利用者が増えたかというとそうでもありませんでした。
当初は全く知名度が上がらず、取引数もごく僅かで人気がないものとなっていました。
理由はいくつがあり、一つはその当時は他の資金調達手段との間でさほど優劣を感じにくかったという事情があります。
当時は現金以外では手形取引などが主流で、今のようにITシステムが機能するということもありませんでしたから、わざわざ慣れた手形取引を放棄してよく分からないファクタリングに手を出すということが少なかったと思われます。
また当時は今よりも企業や経営者の信用というものが重要視されていた時代です。
今でも信用はもちろん大切ですが、今以上に昔は信用が重視されていたのです。
そのような社会背景の中で、仮に売掛金を譲渡したと知られたらどうでしょうか。
債権を売る=売らなければならない事情がある=資金繰りに窮していると認識され、信用が落ち込んでしまうことが予想されます。
これにより、その後の取引を断られたり、融資の打診を断られるといった事態が懸念されます。
「信用」の重みが今よりもずっと重要性を持つ時代に、ファクタリングが浸透しづらかったということは理解できます。

■2000年以降から潮目が変わる

2000年以降から潮目が変わる

潮目が変わり始めたのが2000年以降です。
2005年には債権譲渡登記制度が改正され、より簡便に債権譲渡登記ができるようになります。
2006年には会社法が改正され、より機動的なビジネス環境が整えられるようになります。
近年のルール改正でインパクトが強かったのが譲渡禁止特約付きの債権も譲渡可能になったことです。
債権譲渡禁止特約とは、売掛債権の当事者間における取引の契約上で、第三者に売掛債権を譲渡しないことを約束するものです。
従来、この譲渡禁止特約が付いた債権を譲渡すると、その譲渡は法律上無効になるとされていました。
ですから仮に譲渡したとしてもその取引は法律上成立せず、譲渡した会社は代金を受け取ることはできません。
仮に受け取ったとしても、不当利得として返還義務が生じることになります。
安全な資金調達手段としては機能しないことになり、債権があっても利用ができないわけです。
これが近年の法改正により、譲渡禁止特約付きの債権も原則として譲渡が有効とされたため、資金調達手段として一層の利便性向上に資すると期待されました。
また手形取引の方面においても、近年のITシステムの発達により紙の手形は役目を終えたとされ2026年までに廃止されることが決まっています。
他の資金調達手段が役目を終えていく中で、ファクタリング業界には完全オンライン取引やAI技術の導入が導入され目覚ましい進歩が見て取れます。
地理的要素に左右されることなくどこにいても取引でき、紙媒体を使わずにオンラインで資金調達が可能になったため手間のかかる対面での面談も不要になっています。
迅速性もさらに向上し、早ければ数時間で資金調達が叶う環境になっています。
たかだか直近の十数年でこれほどの進化を見せたのは個人的にも驚きですが、借り入れに代わる新しい資金調達手段として立派に第一線を張っているという自覚を持てます。

■融資と同等の資金調達手段に

融資と同等の資金調達手段に

融資とは全く異なるスキームを持つファクタリングはメリット面でも融資にはない多くの利点を有します。
担保や保証人が要らない、審査に時間がかからない、即日資金化が可能、信用面で影響がでないなど経営者や企業にとって利点が多いので、借り入れよりも優先してファクタリングをメインの資金調達手段にしている経営者も多くいます。
融資や借り入れは返済の義務が生じ、これが経営に悪影響を及ぼすことがあるため、実は政府も以前から流動債権を活用した資金調達を推進する姿勢をとっています。
ファクタリングは返済という概念がなく、売掛債権という社内の資産を活用するものです。
他者に頼ることなく、自力での資金調達が望めるわけですから、経営への悪影響を避けることができます。
ファクタリングは今後も間違いなく利用が増えてく業態ですので、ぜひ皆さんにも自社内の有用資産である売掛債権の活用をお考えいただきたいと思います。

■まとめ

本章では日本におけるファクタリングの歴史について見てきました。
元々海外発祥のものですので、海外に比べると日本でのファクタリングは出遅れた感がありますが、今はもう状況が一変しています。
ルール改正やIT技術の発展により、使い勝手が飛躍的に向上したためメインの資金調達法として第一線で活躍しています。
ビジネス慣行はよりスピード感を求める時代になっていますから、迅速、確実に資金確保が望めるファクタリングをぜひ活用して頂きたいと思います。