現在、国内で大きな問題になっているのが企業の後継者不足です。
事業承継が上手くできずに廃業を選択する企業も増えていて、このままでは国内経済の後退から国力の低下につながる危惧も持たれています。
この問題は大変奥が深いものですが、本章では現在の後継者不足がどう問題になっているのか捉えながら、対応する際のポイントについても見ていきます。

2025年問題とは?

2025年問題とは?

2025年問題とは、日本の人口減少や人口の年齢分布のいびつさからくる様々な社会問題の発生を危惧するものです。
2025年は第一次ベビーブームで生まれた、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる年で、日本の超高齢化が一気に進む年とされています。
2025年問題でどのようなことが危惧されているのか見てみましょう。

①社会保障負担の増加

年金や介護・医療などの社会保障費は年々増加しています。
日本は皆年金、皆保険制度が運用されていて、高齢者の医療費や年金なども若い世代が支えています。
年齢分布がいびつになり、支える若年層より支えられる高齢層が多い状況では社会保障費の負担感がさらに増してきます。

②人手不足が深刻化する

働く現役世代が少なくなれば人手不足がさらに進みます。
今現状でもかなりの不足感ですから、これがさらに進むとなるとかなり心配です。

③医療などの生活インフラの維持が難しくなる

人手不足は一般商社だけでなく、病院など社会インフラ事業にも影響します。
必要な医療を受けられないといった弊害が出てくるかもしれません。

④後継者不足から企業倒産が増える

そして人手不足は後継者のなり手不足にもつながります。
会社を経営する能力とやる気がある人物は簡単には見つかりません。
加えて、人材不足からこれまでのビジネスモデルが成り立たなくなり、事業をたたむ所が増えてくると予想されます。

企業倒産が増えるとどうなる?

企業倒産が増えるとどうなる?

続けられない企業は撤退すればいいと単純に考えることはできません。
日本が国として存続できるのは経済力のおかげであり、その経済力は国内の事業者が生み出しています。
ある予測では2025年問題で企業倒産が進めば、GDPで約22兆円の損失が出るとされています。
そしてこれに伴い650万人の雇用が失われるという予測もあります。
これはなかなかインパクトのある数字で、不気味な怖さを感じます。

後継者に会社を継がせる方法

後継者に会社を継がせる方法

事業承継として後継者に会社を継がせる方法には以下のように大きく三種類あり、まずは同時並行的に検討しつつ、現実的に可能な選択肢に絞っていくのが基本です。

①親族内事業承継

現経営者の親族に後継者になってもらうものです。
昔と違い、最近は責任を負うことや会社の負債の連帯保証人になる事などを嫌って後継者を断られることが多くなっています。

②親族外事業承継

経営者の親族以外で会社の役員や管理職、あるいは平社員でも、やる気とセンスがある人物がいれば後継者候補になります。
社内の事情を分かっている強みがあり、2000年以降は親族外承継の割合が増加してきています。

③M&A

第三者に事業を譲渡するものです。
譲渡が成立すれば倒産させずに済みますが、中小の事業者ではM&Aを成立させるハードルはかなり高いです。

事業承継を考える際のポイント

事業承継を考える際のポイント

ここでは事業承継を考える際のポイントについて見ていきます。

①後継者選定は早めに

親族内、親族外事業承継の検討面では後継者候補の選定をできるだけ早く行うことが求められます。
候補の指定が済んでも、後継者としての育成にはかなりの時間がかかります。
役員以外で経営ノウハウがない場合は特に時間がかかるので、後継者の選定は早めに行うのが基本です。

②売却先の検討は専門家の知識を活用

M&Aで進める場合は法務、税務などの知識が必要なため、多くの場合専門家の助力を得ることになります。
信頼できる専門家と早めに伝手を作っておくのがお勧めです。
ちなみに、中小企業庁のガイドラインではM&Aは以下のフローで進めるとされています。

ⅰバリュエーション

対象企業の価値を評価することで、マッチング前に相手の素性や信頼性などを検討する段階です。

ⅱマッチング

バリュエーションで取引対象としての素質があると判断した相手に接触することです。

ⅲ基本合意締結

交渉を進めること、及び相手方企業を取引対象として調査することについての合意契約を指します。

ⅳデュー・ディリジェンス

主に買い手側が売り手側企業の財務、法務などに関して詳細な調査を行います。

ⅴ最終契約締結

条件が合意に至ったら最終契約の締結に臨みます。
以上の流れは数か月を要すので、時間的余裕が必要です。

③国の優遇施策を活用する

事業承継においては相続税の納税猶予や納税免除、また事業用財産が相続における遺留分の対象とならずに済むよう遺留分の特例等の施策が用意されています。
これらは知らないと活用できないうえに、手続きに期限があるなど利用勝手は決して良くありません。
活用するには専門家のサポートが重要になるので、企業をサポートする行政書士や税理士、中小企業診断士などに相談してください。

まとめ

本章では国内事業者における後継者不足の現状や、この問題にどう対応するべきかについて見てきました。
後継者不足の問題は人口減少が絡む2025年問題の中の一つとして捉えられていて、事業承継が進まず倒産する企業が増えることが危惧されています。
これに伴い社会、経済面で悪い影響が出ることが心配されています。
後継者を見つけて育てるには時間がかかるので、早め早めに先手を打って対応を考えるようにしてください。
これはM&Aで事業譲渡を考える場合も同様です。
せっかく育てた会社を次世代に繋げられるよう、専門家の協力を得ながら進めるようにしてくださいね。