資金繰りに悩む中小企業や個人事業主にとって、迅速かつ柔軟な資金調達手段として注目されているのがファクタリングです。


売掛金を活用して即日で資金を得ることができる仕組みは、銀行融資に頼らず経営を安定させてくれます。
本章ではファクタリングにおける審査のポイントについて詳しく解説し、通過率を高める準備や工夫についてわかりやすくお伝えしていきます。
これからファクタリングを検討している方や、過去に審査で苦戦した経験がある方はぜひ参考になさってください。

■ファクタリング審査の基本的な流れ

ファクタリングの審査は銀行融資ほど厳格ではないとはいえ、最低限の信用情報等の確認がなされます。
審査の流れを見てみましょう。
申込み段階では会社情報や代表者の情報、取引に関する情報などをファクタリング会社に提出します。具体的には代表者の方の身分証明書や売掛先にかかる請求書や発注書、契約書などを提出します。
その上でファクタリング会社は申込者と売掛先の信用情報や支払実績、反社会的勢力との関係の有無、債権の確実性などを審査します。
審査に通過すれば契約書の締結が行われ、速やかに資金が振り込まれることになります。
ここで重要なのは、審査対象は申込者(債権の売却者)だけでなく、売掛先にまで及ぶという点です。つまり取引先の信用状況が悪ければ、自社が健全であっても審査が通らないことがあるということです。
それでは具体的に審査においてどのような点がチェックされるのか詳しく見ていきましょう。

■審査におけるチェックポイント

審査におけるチェックポイント

ここでは審査におけるチェックポイントを深掘りします。

ポイント①:売掛債権の信頼性

ファクタリング審査において最も重要視されるのが売掛債権そのものの信頼性です。
まず、売掛債権が実在しているかどうかは基本中の基本です。
請求書や納品書、発注書、業務完了報告書など複数の書類を組み合わせて、客観的に債権の存在が証明されることが必要です。
その債権がすでに支払い期日を過ぎている場合は買い取り不可ですし、過去に未払いがあった場合は債権の信頼性が大きく損なわれます。

ポイント②:申込者の信用状況

ファクタリングでは売掛先の信用力が大きな要素ではありますが、当然ながら申込者自身の信用力も審査対象になります。
これは特に2社間ファクタリングの場合に顕著であり、ファクタリング会社は申込者が誠実に契約を遂行する意志と能力を持っているかを慎重に見極めます。
銀行融資のように事細かく細部まで調査されることはありませんが、個別事案においては必要性に応じて過去の金融取引履歴、税金や社会保険料の納付状況、破産歴や民事再生履歴の有無などがチェックされることもあります。

ポイント③:書類の整合性と準備状況

ファクタリング審査においては、提出する書類の内容が正確かつ整っているかどうかが非常に重要です。
各種書類を通じて売掛債権の実在性や金額の妥当性、取引の履歴、契約内容などを確認します。
信用力の高い企業が売掛先であったとしても、書類の不備や虚偽申告が疑われると信頼性は一気に損なわれ、審査は通過しづらくなります。
例えば請求書にはある金額が記載されているのに、それに対応する納品書がなかったり契約書に記された支払条件と異なる日付で請求していたりする場合は売掛債権の信憑性が疑われます。
書類のフォーマットが曖昧であったり、署名や捺印が漏れていたりすることも審査上のマイナス要因となります。
これを避けるためには日頃から取引に関する書類をデジタル・紙の両面で整理・保管し、いつでも提出できる状態にしておくことが重要です。

ポイント④:売掛先との関係性

ファクタリング審査においては売掛先の企業が信頼できるかどうかだけではなく、その企業との関係性も重要なポイントとなります。
具体的には、どれくらいの期間にわたって継続的な取引を行っているのか、支払いは定期的に行われているか、過去に遅延や未払いはなかったかといった点がチェックされます。
過去に数回しか取引がなく、売掛債権も単発的なものであれば継続性や信頼性の面でファクタリング会社は慎重になる可能性があります。
逆に何年にもわたって定期的な取引を継続している相手先であれば審査通過の可能性は高まります。

■審査に通るために必要な心構え

審査に通るために必要な心構え

ファクタリングの審査において通過率を高めるための心構えやスタンスを見てみましょう。
書類の整備や信頼関係の構築といった要素と同時に、「誠実さ」や「透明性」も重視されます
たとえば申請の段階で不利な情報を隠そうとする行為や、虚偽の情報を記載するようなことがあれば、審査に落ちるだけでなく今後の取引にも大きな悪影響を与えます。
ファクタリング会社は日々多くの申込案件を審査していますから、書類の齟齬や話の不自然さには敏感です。
不審な点があれば取引の安全を確保するために詳しい調査が必要になり、時間がかかる上に最終的に否認されるリスクも高まります。
ですから正直に情報提供を行い、分からないことがあれば率直に相談するという姿勢が評価につながります。
必要書類を迅速に提出し、確認の連絡にも丁寧に対応することで審査担当者からの信頼感も高まります。
これはファクタリングに限らず、あらゆるビジネスに通じる基本的なマナーでもありますね。

■ファクタリング審査で落ちるケースとその原因

ファクタリングの審査は銀行融資と比較すれば柔軟であるとはいえ、すべての申込者が通過できるわけではありません。
審査に落ちてしまうケースにはある程度共通した原因があって、それらを事前に理解し対策を講じておくことでリスクを大幅に軽減することができます。
よくある原因のひとつは売掛債権の信頼性に疑義がある場合です。
債権が架空である架空債権取引は論外で、これは架空債権を売ろうとした側が詐欺罪など刑事的な処罰を受けることになるので厳禁です。
実存する債権でも売掛先の支払い能力が著しく低かったりする場合はファクタリング会社が回収不能リスクを懸念し、契約を見送る可能性が高まります。
また取引先との契約書が存在しない、あるいは契約の証拠となる書類に不備があるケースでは売掛債権の法的根拠が不明確となり、譲渡に対する法的安全性が担保できないという理由で審査が否認されます。
次に申込者の信用情報に問題があるケースも挙げられます。
過去に税金の滞納や社会保険料の未納、金融事故履歴などが存在する場合、ファクタリング会社は「相手が契約を誠実に履行するかどうか」に対する不安を抱くかもしれません。
ファクタリング自体は売掛債権の売買取引ですから赤字や税金滞納があっても利用可能ですが、取引当事者として相手が義務を誠実に履行するかどうかというのは別途考慮する必要があります。
経営者の言動など他の要素も踏まえて信頼性が低いと判断されれば契約を見送られる可能性があります。
他には売掛債権の額が極端に少額であったり、回収期限までの日数が長すぎる場合は手数料と業務コストの兼ね合い、あるいは資金回収リスクを考慮してファクタリング会社が契約を断る場合もあります。

■審査に通過しやすくなるには?

ここではファクタリングの審査に通過しやすくなる工夫や心構えなどを見ていきます。
審査を通過しやすい事業者にはいくつかの共通する特徴があり、これらの特徴を参考にして自社に取り入れるとファクタリング審査に通過しやすくなるでしょう。
一つ目は日頃から売掛管理をきちんと行っている会社です。
請求書や契約書、納品書などを正確に保管し、定期的に支払状況を確認している会社は審査の際にもスムーズに対応できます。
これは信用性の高さを示すだけでなく、ファクタリング会社に対する安心材料としても機能します。
また取引先との関係性が安定しており、長期的に取引を継続している企業も評価されます。
継続的な売掛債権が存在することで将来的なファクタリングの利用可能性が高まるからです。
ファクタリング会社にとっても、一度限りの取引ではなく継続的な顧客を確保することがビジネス上の利益につながるため、こうした企業には前向きな姿勢で対応する傾向があります。
そして経営者自身が資金繰りに対して明確なビジョンと計画を持っており、それを言語化して説明できることも重要な要素です。
たとえば「ファクタリングの代金を使って人件費を支払い、来月の売掛金の入金を確保することで健全なキャッシュフローが維持できる」というような説明ができれば、事業の健全性が伝わりやすくなります。
審査に強い企業というのは事業基盤がしっかりしているだけでなく、ファクタリングという仕組みに対して正しい理解と準備を持っています。
利用者側もファクタリング及び資金調達手段全般について知識や理解を深める学びの姿勢が求められるところです。

■まとめ

まとめ

本章ではファクタリング審査のポイントについて見てきました。
ファクタリングは資金調達手段の中でも比較的スピーディで柔軟性が高く、銀行融資に比べて審査のハードルが低いという特徴を持っています。
中小企業や個人事業主にとって、売掛債権を活用してキャッシュフローを改善できる点は大きな魅力です。
ファクタリングの利用には審査があり、最も重視されるのは売掛債権の信頼性とその根拠を示す証拠書類です。
ただしそれだけでなく申込者自身の信用などもチェックされるので、審査においてチェックポイントとなる要点を理解して臨むようにしましょう。
審査に落ちてしまった場合でも、冷静に否認理由を分析し、改善策を講じた上で再審査を申し込めば、道が開けることもあります。
ファクタリングを使いこなす力を養って、より強固な資金体制構築に役立ててください。