長い人生をできるだけ苦労せずに暮らしていくには先立つ資産が必要です。
資産を創造し、育て、守っていくためには私たち一人一人が正しい金融知識を持つ必要があります。
いわゆる金融リテラシーという言葉もあるように、お金や資産全般に関する基本的な知識は誰もが身に着けておきたいものです。
本章では社会人以上の方を想定して、自らの資産を守るために知っておくべきことについて見ていきます。
全ての人に求められる金融リテラシー
金融リテラシーはお金に関する知識と理解を持ち、それを適切に活用する能力のことを指します。
単なる数学的な計算能力ではなく、収入と支出の管理、貯蓄、投資、リスク管理、税金の知識など、人生全般に関わる重要なスキルです。
現代社会において金融リテラシーはすべての人に求められる基本的な能力であり、かつその必要性は年々高まっています。
金融リテラシーを身に着けることで自分の財務状況を正確に把握できるようになり、収入に対しての支出を適切に管理することができますから、無駄遣いを減らし、計画的に貯蓄をする習慣が身につきます。
普段「なかなかお金が貯まらない」と実感している人はぜひ意識して欲しいと思います。
また金融リテラシーは借金のリスクを抑えるためにも不可欠です。
クレジットカードやローンの仕組みを理解し、金利や返済計画について十分に考慮することで不必要な借金を避けることができます。
若い世代では安易にローンを組んだり、分割払いを利用したりすることが多いため、金融リテラシーを身に着けてこのリスクを減らすことが望まれます。
お金の問題を扱うFPの分野では、自分でクレジットカードのリボルビング払いの計算をしたり、住宅ローンの借入可能額や購入可能な物件の価格を計算したりしますが、こうしたことができれば無理な借金を避けて安全な人生を送ることがきます。
さらに、資産を増やすためにも金融リテラシーが役立ちます。
銀行に預けるだけでなく、投資信託や株式、不動産など、さまざまな資産運用の選択肢がありますが、これらを適切に活用するには一定の知識が必要です。
インフレの影響を考慮すると、資産の価値を維持・増加させるために投資の重要性が増していると言えるでしょう。
金融リテラシーは単なるお金の管理にとどまらず、経済的な自立や安心した生活を実現するための手段でもあります。
金融リテラシーを高めるために知っておくべきこと
ここではまず金融リテラシーを高めるために知っておくべき基本的な項目について見ていきます。
①自身の収入と支出を把握する
収入と支出の管理は家計運営の基本です。
特に意識すべきなのが支出方面で、支出は大きく固定費(家賃、光熱費、保険料など)と変動費(食費、娯楽費、交際費など)に分けられます。
収入の範囲でこれらをバランスよく管理することで貯蓄が可能になります。
家計簿をつける、アプリを活用するなどして支出の詳細を把握することで節約のポイントを見つけることができますよ。
②公的年金や保険の内容を把握する
日本の公的年金制度は国民年金と厚生年金の二種類に分かれており、これらは老後の生活を支える重要な仕組みです。
年金を軽視する風潮が一部にありますが、日本の年金制度ほど信頼できてお得な制度は他にありません。
民間の制度では到底不可能な公的年金は、老後資金への投資として中心的な役割を果たします。
完ぺきではないにしても、公的年金の仕組みをある程度理解し、自分が将来どのくらいの給付を受けられるかを把握しておくことが大切です。
健康保険や雇用保険についても、病気や失業などのリスクに備えるために欠かせない知識です。
民間の生命保険や医療保険、損害保険は公的な年金や社会保障を補完する役割があり、自分のライフスタイルに応じて適切に選択することが求められます。
保険商品は多岐にわたるため、一般の方は専門家の意見を参考にしながら検討するのがお勧めです。
③各種の金融商品の性質を理解する
金融商品にはさまざまな種類があるので、それぞれの特徴を理解して適切に利用することが重要です。
銀行預金は安全性が高いものの、利息が低いため資産の増加にはつながりにくいです。
一方、株式や投資信託は市場の変動によるリスクがあるものの、長期的に見れば資産を増やす可能性があります。
不動産投資も有効な選択肢ですが、現物不動産への投資は初期費用や維持管理費を考慮する必要があります。
不動産方面は証券化された投資商品も出ているので、以前よりは大分投資しやすくなっています。
いずれにしても、投資を行う際には分散投資を意識し、リスクを分散して安定した資産運用を心がけてください。
昨今のインフレ対策として金融資産を適切に運用することは有効で、資産防衛に大いに気寄与します。
④外部の知見を積極的に活用する
全てを完璧にこなそうとしても人間には限界があります。
特にリスクを伴う金融商品や保険商品などを選ぶ際には、自分だけで判断せず外部の専門家や信頼できる情報を活用することが賢明です。
個別の商品について具体的な相談をしたい場合は証券会社や保険会社に相談しても良いですが、その場合その会社が売っている商品の売込みを受けることになるでしょうから、あくまでも自分自身でリスクを判断して投資の決断を下す必要があることに留意しましょう。
投資に関して中立的なアドバイスが欲しい、ライフプラン全般に関わる相談がしたいということであればFPに相談するのもお勧めで、個別の家庭や個人の状況に合わせたライフプランや資産運用のアドバイスを受けることができます。
同時に自分自身でもニュースや金融情報を定期的にチェックして金融リテラシーを高める努力が必要ですが、情報の真偽を見極める力も必要であり、詐欺や不適切な金融商品の勧誘に注意する必要があります。
資産運用を計画的に行うために知っておくべきこと
次に、もう一歩踏み込んで資産運用を行う際に知っておくべきことについてポイントを押さえて見ていきます。
⑤目標を明確にする
まずは資産運用の目的をはっきりさせることが重要です。
「老後資金を準備する」「将来の住宅購入資金を貯める」「子供の教育費を確保する」など、人によって目標は異なります。
上の三つの資金は人生の三大資金とされていますので、ほとんどの人が意識することになる項目です。
目標を定めることで資産運用の方法やリスク許容度を決めやすくなります。
また短期・中期・長期の目標を設けることで状況に応じた適切な資産配分が可能になります。
一例として短期的には銀行預金や債券で安全性を確保し、中長期的には株式や投資信託などで資産の成長を狙う方法が考えられます。
資産運用の方法としてNISAやiDeCoも注目されていますね。
これらの制度を利用すると税制優遇を受けながら資産運用ができ、効率的に資産を増やすことができますから、ぜひ検討してみましょう。
⑥資金計画を立てる
資産運用には時間がかかるので計画性が求められます。
まずは現在の収入、支出、貯蓄額を把握し、資産運用にどれだけの資金を回せるのかを考えます。
毎月の収入から一定額を投資に回す仕組みを作ることで無理なく資産形成を進められるでしょう。
またライフイベント(結婚や住宅購入、子供の進学など)に応じた資金需要を想定し、適切なポートフォリオを組むことが重要です。
その際には税金や手数料の影響を考慮する必要があるので、資産運用のコスト面にも意識を向ける必要があります。
⑦不測の事態に備える
市場の変化で痛手を被る可能性もありますし、不測の事態が生じて一時的に出費が備える可能性もあります。
ですからすべてを投資に回すのではなく、すぐに使える手元資金を用意しておくことも肝要です。
この点では流動性のある資産を確保することがポイントです。
急な医療費や失業などの予期せぬ事態に備えるため、生活費の数ヶ月分を現金や短期預金で保持することが推奨されます。
また市場の変動により投資資産が一時的に減少する可能性があるため、必要な資金を確保しておくことで、焦って資産を売却するリスクを減らせます。
金融資産の中途換金では元本割れを起こして損をしてしまう危険があるので、余裕を持っておくことは金銭的にも心理的にもとても大切です。
流動性の高い資産と長期的な投資資産をバランスよく組み合わせましょう。
⑧リスクとリターンをコントロールする
投資には必ずリスクが伴いますが、そのリスクを正しく理解し、適切にコントロールすることが成功の鍵となります。
リスクには市場変動リスク、金利変動リスク、信用リスクなどがあります。
例えば株式投資は高いリターンを期待できますが、価格変動が大きいため慎重に選定する必要があります。
一方、債券や定期預金はリスクが低く安定的な収益を得られる反面、リターンが限られます。
分散投資を行うことで資産の安全性を高めることができ、リスクを分散できます。
投資のタイミングも重要で、市場の動向を把握した上で適切な売買を行うことが求められます。
まとめ
この回では自らの資産を守るために知っておくべきことについて見てきました。
資産を守ることは自分の人生を守るのと同じことで、そのためには関連する知識を持つ必要があります。
本章では知っておくべき点に付いて基本的な項目と少し踏み込んだ項目の両方を見てきましたが、自分のペースで少しずつ勉強を進めてみてください。
知識が資産防衛に資するということが分かれば、自然と勉強意欲は高まってきます。