適切な投資を行うことで国民一人一人の生活が豊かになり、また経済が活性化されて国力増進につながりますから、政府はぜひ多くの国民に投資を行ってほしいと考えています。
株式投資は国内企業の資本を増強して経済活性に寄与しますし、海外との競争に負けないための資本体力を提供します。
私たち日本国民にとって恩恵が返ってくるものですから、少しでも多くの国民の皆さんに株式投資に興味を持っていただけたらと考えます。
この回では株式投資の基本的な知識について横断的に解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

株式投資で得られる権利

株式投資で得られる権利

株式投資を行う人はその会社の株主となり、以下の三つの権利を取得します。

①配当請求権

企業活動から生じた儲けから一定額を配当という形で受け取ることができ、金銭的な利益を得ることができます。

②議決権

会社の運営方針に一定程度参画できる権利で、議決権を行使することで会社の意思決定を左右することができます。

③残余財産請求権

万が一会社が倒産した時にも、一定の残余財産を受け取ることができます。

株式投資で得る収益の種類

株式投資で得る収益の種類

上で見た配当はいわゆるインカムゲインで、一定の時期になると自動的に分配されます。
この他、その会社の運営が上向き株価が上がった場合は市場で株式を売却することで値上がり益を得ることもでき、これをキャピタルゲインといいます。
キャピタルゲイン狙いの場合は下で見る株価の動きのメカニズムや投資指標などを考慮して値上がり益が出そうな銘柄を選定する必要があります。
一方、株主優待を目的にして投資することもでき、この場合は長期保有が前提なので自身が欲しいと考える優待の種類から選定することになります。

株価が変動する要因

株価が変動する要因

株価は多くの要因が絡み合って常に変動します。
一概に変動を予想することは難しいのですが、企業業績の予想などの他に金利動向も大きく影響するとされます。
金利が低下すると企業の資金調達のハードルが下がり設備投資がされやすくなり業績が上向きます。
これにより企業に投資して利益を得たいと考える投資家が株式を買うので、株式の人気が上がり株価の上昇要因となります。
金利が上がると企業にとって資金調達のハードルが上がり、設備投資が冷え込んで業績は下降します。
業績の上がらない企業に投資をしたいと考える人が減り、同時に高金利の預貯金や債券などで運用することを考える人が増えます。
そのため株式の人気が落ちて株価は下降しやすくなります。

株式の単元

株式の単元

これから株式投資を考える人は、株式の単元に目を向けてください。
株式は必ずしも一株単位で買えるわけではなく、一定単位のまとまった単元でしか買えないことが多いです。
国内の証券取引所に上場されている国内会社の単元株式は100株単位となっているので、購入するにはまとまった資金が必要です。

株式投資の判断尺度について

 

株式投資の判断尺度について

株式投資を行う場合、どの会社に投資したらよいかを考えなければなりませんから、それを判断する目線をやしなう必要があります。
ここでは株式の銘柄を選定する際の投資尺度について押さえていきます。

①株価収益率(PER)

株価収益率は対象企業の株価が割安なのか割高なのかを判断する指標の一つで、判断材料をその会社の収益力に求めるものです。
計算式としては以下のようになります。

株価収益率(PER)=株価÷1株当たりの当期純利益

上記は1株当たりの数値を利用する方法ですが、株価×発行済み株式数=株式の時価総額、1株当たりの当期純利益×発行済み株式数=当期純利益となるので、以下のような算式でも求めることができます

株価収益率(PER)=株式時価総額÷当期純利益

参考にする資料によっては1株当たりの数値だったり株式全体の時価総額だったりすることがあるので、どちらでも計算できるということを覚えておきましょう。
ちなみにPERの値は大きいほど株価が割高と判断され、値が小さいと割安とされます。
比較する際は異種ではなく同種の企業の数値を比べるようにしてください。

②株価純資産倍率(PBR)

PBRも株価が割安か割高かを算定する指標ですが、こちらは判断材料を会社の収益力ではなく純資産の価格に求めるものです。
計算式としては以下のようになります。

株価純資産倍率(PBR)=株価÷1株当たりの純資産

これも会社全体の能力で捉えることができ、以下の算式でも求めることができます。

株価純資産倍率(PBR)=株式の時価総額÷自己資本

ここで「自己資本」について注意すべき点をお伝えしておきます。
自己資本は貸借対照表の右下の純資産に入るものですが、会社法改正により以前とは捉え方が変わっています。
純資産の価額のうち「株主資本」と「その他の包括利益累計額」を足したものが自己資本になります。
純資産のうち「新株予約権」と「非支配株主持分」は含まれませんので注意してください。
PBRも数値が大きいとその株式は割高と判断され、数値が小さいと割安と判断されます。
やはり同種の企業の比較には向いていますが異業種の企業間での比較には向きません。

③自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率は上記二つのように株価を直接の要素とするものではなく、その会社の自己資本に対する収益力をもって判断する指標です。
計算としては以下のようになります。

自己資本利益率(ROE)=当期純利益÷自己資本×100

この計算で用いる自己資本の数字は期首と期末の平均値を用いることが多く、期首の数値は実際には前年の期末の数値を用います。
平均値が分からなければ当年の数値だけで計算することも可能です。
ちなみに当期純利益を発行済み株式数で割ると1株あたりの当期純利益に、自己資本を発行済み株式数で割ると1株当たりの自己資本として表されます。
会社全体の能力として評価するか1株当たりで評価するかの違いですが、どちらでも同じ結果になります。

④配当利回り

配当利回りは株価に対して利回りがどの程度になるかを示す指標です。
計算式としては以下のようになります。

配当利回り=1株当たりの年間配当÷株価×100

例えば年間の配当が50円で株価が1000円だったとすると、50円÷1000円×100=5%の配当利回りになります。
会社全体の能力で示すには分子と分母に発行済み株式数を掛けて、以下の算式で表すこともできます。

配当利回り=年間の配当総額÷株式の時価総額×100

参考にする資料からどちらが読み取れるか確認してください。

⑤配当性向

配当性向は企業活動で得た利益のうちどれくらいを配当に回しているかを図る指標です。
計算式は以下の通りです。

配当性向=1株当たりの年間配当金÷1株当たりの当期純利益×100

会社全体の能力で示す場合は以下のようになります。

配当性向=年間の配当総額÷当期純利益×100

配当性向が高ければより多くの利益を株主に還元している会社と判断できますが、高ければ良いというものではありません。
設備投資などに適切に利益を投入し、今後の成長を図る姿勢も必要です。
一般に、若い企業ほど成長のための資金が必要なため配当性向は低めに、成熟した企業ほど配当に回せる余裕が出て配当性向が高くなります。

株式を取引する場所

株式を取引する場所

我が国の株式の取引市場には大きく東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所の4つがあります。
各証券取引所にはより細かい証券の取引区分が設けられていますが、東京証券取引所に関しては近年取引の時間帯が変わったのでお伝えしておきます。
従来、東京証券取引所では午前(前場)が9:00~11:30まで、午後(後場)が12:30~15:00までの時間となっていましたが、2024年から午後の時間帯が延び、12:30~15:30までとなりました。

株式の配当にかかる税金について

株式の配当にかかる税金について

株式投資で得られる配当は基本的に配当所得として20%の税金がかかります。
実際には上場株式で大口の株主を除く普通の株主であれば確定申告をするかどうか選択でき、申告をしない場合は20%が源泉徴収されて課税が終了します。
あえて確定申告をすることもでき、株式の譲渡所得と損益通算したり、配当控除を利用して税金を安くすることもできます。
損益通算とは、ある取引で生じた損失を別の取引で生じた利益と相殺することで利益を圧縮し、利益から生じる税金を少なく見積もることができる税制上の負担軽減措置です。
一定のルールに従って損益通算することにより、株式の配当から生じた利益を少なく見積もって、そこから生じる税金の負担を減らすことができます。
配当控除は一定のルールに則って配当所得から生じる税金を減らせる仕組みで、発生した税金から直接マイナス計算できる税額控除の仕組みになっています。

株式の売却にかかる税金

株式の配当にかかる税金について

株式を売却した際にも売却益には税金がかかります。
こちらは株式に係る譲渡所得という税種目になっていて、株式を購入する際にかかった費用や譲渡の際にかかった費用を控除した正味の儲けにかかる税金です。
上場株式の売却に際してもし譲渡損が生じた場合は、上場株式の配当所得と損益通算できるので、ダイレクトに課税されるよりも税負担を減らすことができます。
他にも公社債投資信託の利子や分配金、譲渡差損益と通算できる仕組みもあります。
ルールに則って損益通算をしてもなお残った譲渡損は、最大3年間は繰り越し控除が可能です。
つまり翌年以降三年間は確定申告をすることで同じように損益通算が可能で、税負担の軽減措置を受けることができます。

まとめ

本章では株式投資の初心者が知っておくべき基本知識について見てきました。
株式投資の世界は奥が深いので、本格的に手を出す前にある程度知識を得たいと考える人が多いと思います。
焦ることは無いので、少しずつ知識を得ながらゆっくりと投資の経験を積んでいくことをお勧めします。
投資は株式だけでなく債権や投資信託、複雑なものでは先物、オプションなどの派生商品もあり、かなり奥が深い世界です。
興味がある分野の勉強を重ねて少しずつ理解を深めていってくださいね。