大企業と比べると中小企業はどうしても競争力が弱く資金面でも脆弱性があるなど、経営者の立場としては歯がゆさを覚える時があります。
中小の事業者としては少しでも早く成長できるように工夫が求められるところです。
この回では中小企業の成長を加速させるための施策について見ていきますので、ぜひ参考になさってください。
今回は生産性を上げる施策、集客力を上げる施策、社内人材の定着と育成を図る施策の大きく3つにわけ、それぞれの具体的な中身を見ていきます。
■生産性を上げるための施策
最初に生産性上げるための施策を見ていきます。
人手不足が深刻化する中で少しでも効率よく利益を生みだすには生産性を上げる必要があります。
このための方法を見ていきましょう。
①適材適所の人員配置
社員には個性があり得意とする業務、相性の良い仕事内容はそれぞれ異なります。
その社員の能力を最も発揮できる仕事を任せれば、最大限の生産性を発揮してくれるでしょう。
この点、大企業だと社員の希望よりも会社の人事異動の事情が優先されて、望む仕事ができない社員の方が多いと思われます。
ぜひ中小企業の柔軟性を発揮して、社員の希望をよく聞き取り、能力をしっかり評価したうえで適材適所に人材を配置することを考えてみてください。
②業務の仕分け
パソコンもずっと使い続けていると情報の断片屑が溜まって動きが遅くなるので、定期的に再起動すると良いとされていますね。
会社も長く続いていると無駄が多い仕事が少しずつ増える傾向にあります。
かつてはその作業が何らかの意味を持っていたとしても、現在の社員にとっては「これって必要な作業なの?」と疑問が持たれる作業が意外と多いのです。
先輩から引き継いだものなので自分で勝手に止められないということで惰性的に続けられている作業が無いか洗い出してみましょう。
責任を持つ幹部や社長自身が先頭に立ってヒアリングを実施しないと上手く表に引き出せない可能性があるので、幹部社員が陣頭指揮をとってあたるようにしてください。
③IT技術の導入
古い体質の会社はITなど現代技術の導入に消極的だったりします。
古き良き社風を大切にしながらも、生産性を上げるにはやはり現代の技術を取り入れないとライバル他社との競争に負けてしまいます。
経営幹部や社長自身がITにうとく導入しようにも何をどう始めればいいか分からないという場合は外部の専門知識をもつコーディネーターに相談するのがお勧めです。
④アウトソーシング
経理や総務、人事などのバックオフィス業務をアウトソーシングすることも考えられます。
バックオフィス業務を自前で賄う場合、そのための人員確保などで経費が取られ、前線の営業部隊が手薄になる事が考えられます。
バックオフィスを外注しスリム化を図れれば、戦力を営業に振り向けることで効率の良い利益創出につながります。
■集客力を上げるための施策
次に見ていくのは集客力を上げるための施策です。
業種や業態によって相性の良し悪しが違ってくると思いますが、以下の各手法が自社の営業のヒントにならないか検討してください。
①QRコードの活用
実店舗を持って集客をするタイプのビジネスの場合、従来のチラシ配布における効果は限定的でした。
今は配布するチラシにQRコードを簡単に載せられる時代です。
これによりダイレクトに見込み客の反応をキャッチできるので、非常に効率良く集客を図ることができます。
QRコード作成は専門業者に任せることもできますが、無料のツールを使えば割と簡単にできます。
②コラボイベントによる集客
まだ自社の製品の認知度がそれほど上がっていないと考える場合、他社とコラボして集客イベントを実施して商品の露出を図ることもできます。
コラボする相手は同業他社も異業種もできるだけ多くを巻き込んだ方が自然になるので、商工会などに働きかけるのが効果的です。
例えばですが、地元の住宅展示場のイベントなどに合わせて販促会を開いたり、先着順で無料で商品を配布して認知度を向上させるとうこともできます。
③メディアの活用
地元テレビ局やラジオ局、新聞、ケーブルテレビ、無料情報誌、地域に流通するフリーペーパーなどに自社の情報を乗せるのは非常に効果的です。
通常、広告枠を買ってメディアに載せるには高額の費用がかかりますが、上手く使えば無料もしくは低額の費用でメディア露出を図ることも可能です。
例えば地元情報を扱う番組スタッフ宛に逆取材オファーを出すと、ネタ取りに手間がかからないので喜んで取材してくれることがあります。
この場合は単純な商品の紹介というよりは「開業〇周年の記念イベント」などとしてアナウンスする方が消費者目線からして自然ですし興味を持ってもらい易いでしょう。
特にラジオ方面は地元ネタを積極的に収集する傾向にあるのでお勧めです。
紙面方面ではフリーペーパーなども広告枠は有料ですが、読者が利用できる割引クーポンを提供することで無料で情報を乗せてもらうことができます。
フリーペーパーは継続して割引クーポンを乗せることが多いので、一度交渉すれば後は次回以降も自動的に自社の情報を載せてくれるので、無料で継続したCMを流しているのと同じ効果があります。
こちらもかなりお勧めできるので検討してみてください。
④ワークショップを開く
商品販売ではなくサービスを売る形態の業種に相性が良いのがワークショップや無料体験会などの実施です。
例えば整体やマッサージ業関係であれば、一回無料や半額でサービスを提供し誘客するなどの他、「体のゆがみを自分で治す方法を無料で教えます」などとして体の不調を日ごろから感じている客層の興味を引き付けることもできます。
他にも士業などであれば無料相談会、酒造会社であれば工場見学、リフォーム会社などであればDIYの体験会など、業種によって効果的なワークショップを開けないか考えてみてください。
⑤検索エンジン最適化
リアル店舗を持たずWEB上で展開する事業者、もしくはリアル店舗を持ちながらもWEB経由での集客が主な事業者の場合は検索エンジン最適化を意識したWEBサイト作りが欠かせません。
いわゆるSEO対策というもので、Googleなどの検索エンジンで上位表示されるには想定顧客層が興味を持っているであろうワードを適宜自社サイト内に挿入しておく必要があります。
本格的なSeo対策は専門業者に任せる必要がありますが、そこまでしなくとも顧客の役に立つ内容のWEBサイト作りに励めば自然と上位に表示されるようになります。
上位表示されるまでには時間がかかるので、あまり焦らずに反応を見ながら気長に待つ姿勢を持ちましょう。
⑥リスティング広告
短期間で一気に売り上げを伸ばしたい、知名度を上げたいという場合、Googleのリスティング広告を利用するのが効果的です。
費用はかかりますが、スポンサー枠として検索の最上位に表示されるので、個別にSEO対策に手間や時間をかけなくても簡単に上位表示が叶います。
費用面では初めての利用の場合、クーポンを利用して一定額分の無料枠を利用できることがあります。
リスティング広告の利用手順は経験が無いと戸惑うかもしれませんが、使い方は専用のダッシュボードで丁寧な解説と説明があるのでそれほど難しくありません。
疑問あれば担当者に相談できる仕組みもあるので適宜活用してください。
リスティング広告を利用する場合に注意したいのが、反応があった顧客への対応をしっかりできる環境を整えておくことです。
リスティング広告は読者に対しダイレクトに情報を届けられるので、実施した直後からかなりの量の反応があるはずです。
それらの反応につぶさに対応できる環境をあらかじめ整えておかないと、せっかく問い合わせがあっても対応できず、顧客の興味がうすれてしまい購買につながらないといったことになります。
これは非常にもったいない話ですので、人員体制なども含めて十分な対応ができる環境を整えてから実施するようにしてください。
⑦オンラインショップを運用する
オンラインショップは非常に効率の良い営業媒体であり、また決済媒体ともなります。
オンラインショップは実店舗を持っていても、それとは別に運用することで色々と利点が生じます。
WEBをよく使う客層の興味を効率よく引き付けられますし、リアル商品を店舗で販売している場合でも、オンラインショップで購入してもらい、当該商品を郵送で配送するという購入も可能にします。
また遠方のお客さんや脚が悪くて移動が難しい高齢者の方などにも訴求出来ます。
決済手段をクレジットカードのみとすることで即時の売り上げが可能になり、この場合は無断キャンセルを防止することもできます。
最近、居酒屋さんや飲食店などで予約しておきながら当日無断キャンセルされるという事例が多く報告されています。
即時決済を導入することでこうした不利益を防ぐことが可能になります。
オンラインショップは実商品ながくとも、「サービスを受ける権利」を商品登録できますから、整体などのサービス業者でも適用があります。
オンラインショップを無料で作れるツールもあるので一度調べてみると良いでしょう。
■社内人材の定着と育成を図る施策
最後に社内人材の定着と育成を図る施策について見ていきます。
近年は人手不足が強く叫ばれており売り手市場となっていますから、社員は他に魅力のある企業に割と簡単に移ってしまいます。
優秀な人材はぜひ社内で定着させ育成を図りたいところです。
そのために以下を意識して社員とのエンゲージメントを図りましょう。
①就業環境の整備
ワークライフバランスを意識して、社員が安心して自身や家族との生活を営めるよう、有給休暇の積極取得を推奨したり、希望があればリモートワークを認めるなどの環境整備を考えてみましょう。
②キャリアパスの提供
今は先の見通しが立ちにくい世の中と言われていますが、社員もその不安を感じています。
この会社で頑張れば将来どのような道筋で昇進、昇給していけるのかを明確にすることで、「自分の未来のために頑張るんだ」という意識付けが可能になります。
先の見通しが立つことで社員のモチベーションが上がり、会社の成長にもつなげることができます。
③継続的な教育プログラム
今の若い社員は自己向上意欲が強く、自分を高めることが大好きです。
これは好意的に捉えることができ、この要望に応えて継続的な教育プログラムを提供してあげることで、社員も会社もwin-winの関係を築けます。
④チームビルディング
個の役割も大切にしつつ、所属する部署やチームへの帰属感を高めることでチーム全体の戦力アップにつながります。
自分がチームの役に立っていると実感することで社員個人としての活動意欲が湧き、そのような意欲の高い人員で構成されたチームが会社の利益創出を図ってくれるでしょう。
■まとめ
この回では中小企業の成長を加速させるための各種施策について大きく3つの分野に分けて見てきました。
今回は生産性を上げる、集客力を上げる、人材の定着と育成を図る施策をそれぞれ見てきましたが、業種業態による差異はあれどヒントになる項目はいくつかあったのではないでしょうか?
実施できそうな施策があればぜひ検討してみてくださいね。