無駄を省いた効率的な経営は多くの経営者が望むところだと思います。
コスト管理により無駄を省くことは経営にとって多くのメリットをもたらし、さらには資金調達にも良い影響を及ぼします。
本章ではコスト管理と資金調達との関係や、効果的なコスト管理の方法について解説していきます。
■コスト管理で発生するメリット
企業経営においては商品やサービスなどの売り上げからコストを引いたものが利益となります。
コストは下で見るように様々な項目で発生しますが、できるだけコストを抑えることで企業にとっては以下のようなメリットが生まれます。
①利益を最大化できる
利益を圧迫するコストを減らせば純粋な売り上げ利益のパイが増え、利益の最大化につながります。
②事業拡大のチャンスを作れる
利益の増大により企業体力に余裕を持たせることができるようになり、設備投資によるさらなる利益獲得や事業拡大のチャンスが広がります。
③経営効率が上がる
企業運営では経営者の目の届きにくい所でどうしてもコストが膨らむ傾向になるので、定期的に見直しをしましょう。
コスト削減で経営効率が上がり、株主や社員への利益還元も実現できるでしょう。
④資金調達がしやすくなる
そしてコスト管理により効率的な経営ができていれば、資金調達が必要な場面でも良い影響をもたらします。
融資の打診を受けた際、銀行は資金管理体制に無駄がないかどうかもチェックします。
お金をじゃぶじゃぶ使っても効果的なコスト管理ができていないとすぐに資金が枯渇し経営は安定しません。
コスト管理ができていない企業には返済リスクを考えて融資を渋ることになるでしょう。
逆にコスト管理ができていると判断されれば、一時的な資金不足を補充してやれば経営は安定するだろうから、資金提供しても問題ないだろうと判断してもらえます。
銀行融資だけでなく株主募集の際にも同じことが言えます。
コスト管理ができていない会社は資本増強の際にも投資家に良い目で見てもらえませんが、管理がしっかりできている企業は資金提供を受けやすくなります。
■企業活動ではどのようなコストが発生する?
では企業活動でどのようなコストが発生するのか見てみましょう
①電力・ガスなどのインフラ料金
電気、ガス、水道などはほぼ全ての事業者が利用すると思いますが、業種によってこれらの費用が多額になる場合は特にコスト管理を丁寧に行う必要があります。
昨今は海外情勢の影響でエネルギー価格が高騰していますから、この面からも効果的なコスト削減の意識が求められます。
②宣伝広告費
宣伝広告費もほぼ全ての企業でかかる経費です。
想定する潜在顧客に効果的に情報を届けられるよう、広告媒体を厳選するなどの工夫が必要です。
③機材や設備費用
製造関連の業種では機械や機材、設備方面のコストが重くなります。
導入時だけでなくメンテナンスにも費用がかかるので、なかなか大変です。
仕入先を一本化して導入コストを下げ、メンテナンスの窓口も一本化してコスト管理ができないか検討しましょう。
④地代やテナント代
自社保有の固定資産がない場合は物件を借り受けることになるので、地代やテナント代がかかります。
影響のない範囲で安いテナントに引っ越す、また拠点を持たずにできる内容の事業展開を考えるなど思い切った転換も検討できます。
⑤仕入れコスト
生産品の販売ビジネスでは仕入れコストが必ず発生します。
仕入ができないと商売が成り立たないので、コスト削減が可能になるよう仕入れルートを定期的に見直すのは有効です。
⑥人件費
人件費もコストの一つなので、無駄な人員が生じないように経営者は目を配る必要があります。
ただ昨今は人手不足感が強く売り手市場なためすぐに社員が辞めてしまい困っているという会社も多いです。
一旦辞められると採用コストが余計にかかってしまうので、社員が辞めないように福利厚生を充実させるなどの費用は十分かけてあげる方が結果として安く済みます。
■コスト削減の手順
ここではコスト削減を進める手順を大まかに確認します。
①現状分析
まずは現状分析として無駄なコストの洗い出しが必要です。
各部署でかかっているコストの種類や額を算出します。
②机上の試算と優先順位の設定
算出されたコストのうちどれをどれだけ減らせそうか試算します。
その際、削減すべきコストに優先順位を付けると効率的なコスト削減が可能です。
③効果予想
コスト削減で生まれる余剰を利用し、どのような活動が可能になるか考えます。
設備投資を強化して売り上げ増を狙うか、新規事業を模索できるかなどを想定して試算します。
④実施
十分効果が見込めると踏んだ項目について削減を実施します。
⑤効果測定と見直し
実施した結果、思わしくない事象が発生していないか、狙った効果が出ているかなどを随時チェックし、必要な見直しを行います。
■公的資源を活用すべし
国は経営の効率化を支援するための施策を講じていますので、コスト削減を考える際に利用できるものがあれば検討しましょう。
IT導入補助金やものづくり補助金などがあり、タイミングが合えば検討できます。
補助金はだれでも利用できるわけではなく一定の条件が付き、時期的にも限定されるので使い勝手はあまり良くないですが、可能であればぜひ検討してください。
■まとめ
本章ではコスト管理と資金調達との関係や、効果的なコスト管理の方法についてみてきました。
企業活動においては何らかのコストは必ずかかりゼロにすることはできませんが、削減できるコストを減らすことで経営の効率化につながり、資金調達の面でも好影響がでます。
事業者ごとに実情が異なりますので、各部署でどのようなコストがかかっているのか、まずは現状分析から始めて効果的なコスト管理を目指してください。