ChatGPTなど生成AIが世に登場してそれほど時間は経っていませんが、当初の予想通りかなりのスピードで世の中に浸透してきています。
当初は生成AIの危ぶまれる点なども強めにフォーカスされていたため様子見をしていた人も多かったと思いますが、今ではすでに一般企業だけでなく公的機関でも生成AIの活用が進められています。
もはや生成AIを禁止してこの世で使えなくするということは不可能で、浸透がさらに進む前提で世の中を考える必要があるでしょう。
どんどん身近になってきている生成AIに関して、この回では私たちに求められるスキルについて考えてみましょう。
■生成AIの需要は増加の一途
生成AIが登場した当初は自然な文章作成に目を引かれていましたが、今では文章だけでなく画像や動画、音声などにも利用用途が広がっています。
人間らしい声を生成することにより音声での受け答えが可能な他、音楽づくりなどの面でも活用されるようになっています。
テキスト、画像、動画、音声というコンテンツでの利用が可能になったため、一般の方もユーチューブなどのコンテンツ作成で利用している人が多くなりました。
一般利用まで広がっているわけですから、商用利用の方面でも当然需要が旺盛です。
各種コンテンツ制作を手掛ける事業者や、コンテンツ作成を支援する生成AIサービスを主業とする事業者も多く登場しています。
こうした、生成AIを主要商材として利益を上げる事業者が増えている一方で、一般商社で生成AIに触れる機会も増えています。
普段からIT関連業務に従事するエンジニアの方だけでなく、営業戦略を練る際、事務タスクを処理する際などにも利用されることがあり、私たち一般のビジネスパーソンでも当然のように生成AIに触れる機会が多くなっています。
次の項では、私たちに求められる生成AIに関するスキルや素養について見ていきます。
■生成AI人材に求められるスキル
①AIに関するリテラシー
「リテラシー」は理解する能力などの意味で捉えられる言葉で、最近は様々な分野で聞かれるワードです。
ここではAIがどのようなものなのかを理解する能力という意味で用います。
②AIに関する基礎知識
リテラシーを持つためにはAIに関する基本的な知識がないと成り立ちません。
そもそも生成AIはどのような学習をして成長していくのか、「機械学習」や「ディープラーニング」といった概念を理解することが前提になります。
③プロンプト
生成AIは人間が与える条件に従って様々なコンテンツを生成してくれますが、その指示を与える方法がプロンプトです。
作り出される文章なり画像なり動画なりのコンテンツの質はプロンプトに大きく左右されるため、プロンプト入力の仕方が悪いと狙ったコンテンツの制作にたどり着けません。
④言語化能力
プロンプトはAIに指示を出す行為であり、そのために必要になるのが言語化能力です。
生成AIは曖昧な指示や表現が苦手で、指示は明確、明瞭に出してやらないと的確に反応してくれません。
AIが理解しやすいよう、適格な指示を言語化する能力が求められます。
⑤分析力
意図したコンテンツが生み出されるまでには一定の時間がかかるのが普通です。
最初に意図した画像なり動画なりのコンテンツを一度の指示で完璧に生成してくれることは稀で、最初は指示者のイメージとは多少異なるものが作られます。
ここから修正を加えて望ましいコンテンツに仕上げていくのですが、その際に必要になるのがまず分析力です。
先ほど自分が与えた指示でAIはなぜこの画像を作ったのか?自分の指示に至らない所があったのか?あったとすればどこか?その指示をどう修繕すれば良いか?という具合で分析します。
分析を重ねつつ、AIと何度もやり取りして意図したコンテンツに仕上げていきます。
⑥ファクトチェック能力
特に文章方面の生成AIの場合、その内容には真実でないものが多分に含まれていることが多いので注意が必要です。
生成AIはさも真実であるかのように自信をもって記述するため、受け取る側が意識していないとそれを真実だと誤信してしまう危険があります。
これを利用したフェイクニュースなどは実際に世界中で問題になっていますし、政治利用されることもあるなど、軽微では済まない問題になっていることは認識が必要です。
生成された内容が本当に真実であるのかは、生成AIを利用した人間が丁寧なファクトチェックを行ったうえで世に公表する過程を経なければなりません。
■生成AIスキルを身に着けるには?
生成AIに関するスキルやリテラシーを身に着ける方法は様々考えられますが、一般の方が一から身に着けたいと考えた場合は関連するセミナーなどを受講するのが手っ取り早いです。
最近は生成AIを使いこなせるようになるためのセミナーや講座が各地で開かれるようになっていて、かなり身近になっています。
内容的には一般の方がプライベートで利用する想定のものから、業務で利用することを前提に学習内容が組まれるものなど色々あります。
今後は生成AIがより世の中に浸透することを想定し、自治体などが求職者向けに設定する生成AIセミナーなどもあります。
また子育てを終えた女性が仕事や社会に復帰しやすいよう、AI技術を身に着けられる女性専用の講座もあるようです。
企業単位として従業員のAIリテラシーを育てたいと考えた場合、やはり外部の専門業者に外注という形が一番確実です。
中核となり得る人材がいる場合、その人を専門的に育てた上で中核人材して活用することもできます。
デジタル関連を専門に担当する部署があり、適格な人材が複数確保できそうであれば検討してみましょう。
■生成AIには課題が多い
今後も確実に利用が広がる生成AIはまだ発展途上の段階であり、問題や課題も多いということは理解が必要です。
フェイクニュースやフェイク動画などで世の中を混乱させたり、特定の人を攻撃したりする事例は後を絶ちません。
悪意を持つ人が生成AIを使って悪さをする可能性があり、この危険性は自分のすぐ身近にあるのだということは強く認識を持っておく必要があります。
意図せずとも間違った情報が生み出される可能性や、著作権の問題などもあるので簡単な解決は難しいのが実情です。
積極的に生成AIを利用する人、そうでない人にかかわらず、こうした問題点についてはぜひ意識しておきましょう。
■まとめ
本章では生成AIの浸透と私たちに求められるスキルについて考えてみました。
「目に見えるものだけが真実」とされた時代は過去のものになり、真偽不明のものやフェイクも目に見えてしまう時代となっています。
ある意味、生成AIが登場したことによって嘘を見抜くスキルや真実にたどり着くスキルといったものが求められる時代になったのかもしれませんね。
積極的に生成AIを利用する人もそうでない人も、これに振り回されないようにリテラシーを高めていきたいものです。