会社の法人形態は代表的な株式会社以外に複数あり、その中に合同会社があります。
合同会社では社員が受け取る賃金は給与ではなく役員報酬としての扱いになるので、新たに合同会社立ち上げを考える場合は税務や社会保険の費用などを考える際に考慮しなければなりません。
本章では合同会社の給与が役員報酬になる理由や、報酬の決定方法、注意点などについて解説していきます。

■合同会社とは?

合同会社とは?

合同会社は2006年に新会社法制定と共に認められるようになった法人の一形態です。
それまでは株式会社の他に合名会社、合資会社などがあり、それまで認められていた有限会社は新たに設立することができなくなりました(特例として既存の有限会社は存続を認められています)。
そしてこの機に新たに設立可能になったのが合同会社で、株式会社とその他の会社の長短を合わせたような性質を持っています。
設立費用が安く済み、機動性のある運営が可能というメリットがあるため、家族企業やスモールビジネスで起業する際に利用されることが多いです。

■合同会社の社員は役員扱い

合同会社の社員は役員扱い

合同会社では出資する人は全員社員となりますが、この社員というのは株式会社でいうところの役員と同様の立場です。
つまり合同会社の社員は皆役員扱いとなり、会社の代表権を持ち業務執行権限を持つ立場となります。
役員ですから受け取るのは給与ではなく役員報酬となるわけですね。
ちなみに株式会社では出資した株主は必ずしも会社の役員になる必要はありませんが、合同会社の場合は出資者は全てその会社の社員=役員になるので、出資したうえで社員(役員)にならないという選択肢はありません。
結果として受け取る報酬は必ず役員報酬となります。

■報酬の決定方法

報酬の決定方法

報酬の決め方には大きく二種類あります。
一つは定時総会で決める方法です。
法人は税務申告のために決算書を作成して申告手続きを行いますが、申告手続きをする前段階で社員総会を行い、役員報酬について決定することができます。
もう一つは定款で定める方法で、個別に報酬を決定することもできますし、複数の社員(役員)がいる場合は報酬の総額を設定し、これを社員に分配するという方法もあります。
報酬の決定に際してはいくつか注意しなければならないことがあるので、次の項で見ていきます。

■報酬決定における注意点

報酬決定における注意点

ここでは合同会社の社員(役員)の報酬決定における注意点を確認します。

①簡単に変更できない

役員報酬は簡単に変更できません。
基本的には「定期同額給与」とするのが原則で、これは一年間同額で、定期的に支給されるという性質を持つものです。
この原則を守れば、定期同額給与は損金算入が可能です。
年度内に不用意に報酬額を上げ下げすると損金算入が認められなくなることがあるので注意してください。
そのため、会社立ち上げ当初に報酬額を決定する際には、あらかじめ会社の売り上げを細かく予想し、経費倒れにならない範囲で適切な額を算定する必要があります。

②報酬を0にするのは要注意

会社立ち上げ当初は儲けが少ないことを予想して報酬を0にするということも考えられますが、これにはリスクが伴います。
まず、予想以上に儲けが出た場合、全部が税率の高い法人税の的になってしまい税金を多くとられてしまいます。
報酬として社員が受け取れば、税務上は給与所得として課税されるので給与所得控除などの控除施策を使うことができ、これにより税負担を下げる効果が生まれます。
また役員報酬0の場合、被用者保険に加入できないため国民健康保険など個人用の社会保険に加入することになります。
被用者保険は労使折半なので個人の負担が減りますが、被用者保険に加入できないと全て自己負担になります。

③税金は有利になるようシミュレーションを

役員報酬が0の場合は儲けが丸々法人税の的になるので、上で述べたように控除施策が充実している個人の報酬に幾らか振り向けるのが一応安全とされています。
ただし余りに高額な報酬を設定すると税務署に損金算入を否定されてしまう危険があります。
また経費倒れになって会社の経営を圧迫してしまう可能性があるので、いくらの報酬額とするのが会社にとって最も有利になるのかはシミュレーションが必要です。
予想される利益額を想定し、個人の所得税に幾ら振り向ければ法人税でいくらの負担回避になるのか細かい計算が必要になるので、税理士などに相談して適切なバランスを保てるようにしましょう。

■まとめ

本章では合同会社の給与が役員報酬になる理由や、報酬の決定方法、注意点などについて見てきました。
合同会社の社員は会社法上で役員扱いとなり、受け取る報酬は役員報酬の性質になります。
これにより税務上も一般的な給与とは違った扱いとなるので覚えておいてください。