円安がなかなか収まらないニュースは日ごろの報道等でご存じのことと思います。
円安の影響でインバウンド需要の方は旺盛なようで、あちこちで海外からの旅行客を見かけるようになりましたね。
「日本買い」という言葉も出てくるほど、いま日本のあらゆるものが買い時だと海外からは見えているようで、不動産なども海外の資金に食われている様相が見えます。
良い面だけでなく心配な面も多分にある円安に対し、個人と企業の二つの目線でどのような対策を打てるのか考えていきます。
そもそも円安とはどういう状況?
円安は為替用語の一つで、他の海外の通貨に対して、日本円が相対的に安いことを意味します。
対米ドルで考えると、例えばこれまで1ドル130円だったものが150円になった場合は「1ドル」という商品が130円→150円に値上がりしたことになります。
これは、円の値が上がったのではなくドルの値が上がったわけですから、ドルに対して相対的に円の力が弱まったことを意味します。
この、相対的に円が弱い状態を円安といいます。
これまでよりも高いお金(円)を出さないと、海外の通貨が買えないというのが円安です。
では円安が私たちに対してどのようなメリット・デメリットをもたらすのか考えてみます。
個人にどのような影響があるのか
まずはメリット面から見てみます。
円安で発生するメリットとしては、まず外貨建て資産を保有している人にメリットが生じます。
日本円に対して相対的に高い海外の通貨建て資産を保有している人は為替差益で利益が生まれます。
外貨預金などに投資している人は利益が出ていそうですね。
また円安は日本の製品を海外でたくさん買ってくれるので、日本国内の輸出企業にとって追い風となります。
ですから国内の輸出企業に対して投資している人もその恩恵を受けやすいと言えます。
輸出企業の株を持っている人は値上りが期待できます。
デメリットとしては、皆さんも身にしみて実感されていると思いますが様々な品物が値上りしてますよね。
国内で流通する製品は、原材料なども考えるとほとんどが海外からの輸入品です。
海外からモノを円で購入し輸入するわけですから、その円が弱いと輸入により多くの円を支払わなければなりません。
その分、製品に価格転嫁がおき、国内では物価高が進行します。
また海外旅行に行った人から「ラーメン一杯5000円だった!」などの驚きの声が多く寄せられています。
現地の価格を日本円に置き換えて計算すると、そのくらいの高額になってしまうということです。
海外通貨に対して“日本円が弱い”ということがよく分かります。
個人でできる対策は?
このような円安状況の中で、私たちが個人でできる対策について考えてみましょう。
①外貨建て資産の保有
もし可能であれば、外貨建ての資産を保有することを考えてみましょう。
外貨預金の他にも、外国の株式や債券などの投資商品があります。
外貨預金は他の投資商品よりもリスクは多少下がりますが、国内の預金と違って為替差損を気にする必要があり、元本は保証されません。
②国内の好調企業への投資
外貨建ての投資商品は知識が無いと手を出しにくいと思いますので、その場合は国内の輸出企業で好調な銘柄に株式投資をするということもできます。
海外株式への投資と比べれば、国内株式はかなり安全な資産です。
③投資信託の運用
投資方面は知識がなく苦手だという場合は、プロに運用を任せられる投資信託を検討することもできます。
大切なことは、円安だけに注目して回避行動を考えるのではなく、適切なポートフォリオを構成できるように分散投資を考えることです。
投資信託では国内の株式だけでなく、海外株式への投資もできるので、外貨建て資産を比較的安全に運用することができます。
④国内生産品に注目してみる
投資はやっぱりリスクがあるから避けたいという人もいると思います。
そういう人は無理に投資に手を出さず、日ごろ購入する製品を国内生産品にできるだけ絞ってみるということもできます。
多くの製品で原料を海外から輸入しているため簡単にはいきませんが、輸入に頼らず生産できる製品は割安で購入できます。
例えば主食をパンなどの小麦製品からお米に代えて見るというのも一つの手です。
国内生産者の応援にもつながるので、ぜひ意識してみては如何でしょうか?
企業目線で見た場合は?
上では円安に対して個人ができることを見てきましたが、企業目線、経営者目線ではどうでしょうか。
企業目線では輸出企業にとって円安は追い風ですので、こちらは基本的に問題ないでしょう。
しいて言えば、今は絶好の儲け時と言えるので、設備投資などを行って生産力を上げ、多くの製品を海外に輸出してたっぷり儲けてもらいたいと思います。
基本的に円安は永遠に続くものではないですから、いずれ終わりが来ます。
漁師さんが魚が取れる時期に休まず働くのと同じように、儲け時を逃さないようにしてもらいたいですね。
逆風となっているのが輸入企業で、こちらは原材料の高騰につながるなどして苦慮している姿が伺えます。
企業目線で考えられる対策を見てみましょう。
①適切な価格転嫁
必要と思われる範囲で製品への価格転嫁を図るのが一つ筋道になります。
消費者にとっては苦しいところですが、これは社会全体で受け止めていかなければならない問題ですので、必要な範囲で価格転嫁を考えてください。
②固定支出の削減
固定支出の削減や仕入れ先の変更などにより支出削減を目指すことも同時に行います。
すでに取り組んでいる事業者が多いと思いますが、テナント料や電気ガスなどのインフラ料金を安く抑えられないか検討しましょう。
③インバウンド需要の取りこぼしを無くす
業界によってはインバウンド需要を取り込めると思いますが、ただ待っているだけでは需要を逃してしまうかもしれません。
例えばクルーズ船で世界各地を周遊する富裕層が地方の港に停泊する際、地元の旅行会社などがプランニングして地元各地に海外客を案内するなどの工夫もされています。
こうしたプランに、地元の中小事業者も多く絡めるようにして、地元にお金が落ちるようにプランニングできれば潤いも増します。
現状の円安状態で海外客の消費意欲は旺盛ですので、これを逃さないように工夫したいものです。
④事業転換
もし、今の業態ではこの先の未来がかなり厳しいと判断する場合、事業転換を模索することも必要かもしれません。
転換を見据えて相当の余裕をもって新規事業を模索できれば、雇用を継続して会社を存続させることができるかもしれません。
事業転換を考える場合は単独では難しいと思いますし、国や自治体でも様々な支援策を用意していますので、一度商工会や自治体の窓口で相談してみることをお勧めします。
まとめ
本章では円安状況の中で私たちに何ができるのかというテーマで見てきました。
個人の資産防衛という観点では外貨建ての資産を保有するという選択ができますが、投資が難しいならできるだけ国内製品に目を向けるということを考えてみてください。
企業目線では支出削減などで守りを固め、インバウンド需要をこぼさず取り込むなどの工夫をしましょう。
国内では賃上げや利上げの話題も上がってきていますから、いずれは円安に一服感が持てる時がくるでしょう。
その時まではできる範囲で節約するなどし、生活の維持に努めるようにしてください。